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忘れていた預貯金はありませんか。郵便貯金の催告書、8割が届かず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 満期から約20年が過ぎて貯金者の権利が消滅した郵便貯金が急増している問題で、貯金の引き出しを促す「催告書」の8割が貯金者のもとに届いていないことがわかった。登録された住所が違うことなどが原因とみられる。多くの貯金者やその相続者が、その存在に気づかずに資産を失っているおそれがある(9日付朝日新聞)。

 2007年(平成19年)9月30日以前に定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金に預けたものが、満期後20年経過した際に「権利消滅のご案内(催告書)」が送付され、その後2か月を経過してもなお、払戻しの請求等がない場合は、旧郵便貯金法の規定により、権利が消滅し、払戻しが受けられなくなる。

 同機構が発送した催告書は、2019年度6.4万件、2020年度9.2万件、2021年度15.0万件。返送されたのは2019年度5.7万件、2020年度7.2万件、2021年度11.5万件。3年間の合計では発送が30.6万件、返送が24.4万件だった(9日付朝日新聞)。

 つまり8割程度が通知が届かなかったことになる。

 郵便局の利用は地元郵便局が多くなろう。しかし、引っ越しなどで住所が変わった場合には、新しい地区の郵便局であらたな口座を作るなりしている人も多いのではなかろうか。

 同じ金融機関に複数の預金がある場合に複数の預金を「名寄せ」をしなければならない。しかし、その名寄せそのものがそれほど進んでいなかったように思われる。郵便局等において多数の預入限度超過が発見されるなどしていた。

 また預貯金をしていた人が亡くなった場合に、通帳が見つかれば対処はできても通帳がないと確認は難しくなる。

 銀行預金についても、眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されることになった。ただし、休眠預金等となった後も、引き続き、取引のあった金融機関で引き出すことが可能。

 これに絡んだ通知なのか、私のところにも一通の通知が来て、ある銀行の口座に預金が残っていたことが発覚した。銀行はひとつに絞ろうと、その銀行の口座残高はゼロにしていたはずなのにと思っていたが、「普通口座」ではなく「貯蓄口座」のほうに残高が残っていたのである。急いで現金化したのだが、その際、普通口座は取引ができなくなっていたが、同じキャッシュカードを使って「貯蓄口座」は利用できていた。

 ゆうちょなどを含め、金融機関があらたな住所を探るといった作業はかなり困難となる。このため、預貯金をしている人が、あらためて自分が利用してきた口座について確認しなければ、知らないうちに資産を失う可能性がある。とはいえ自分の経験からも、数十年も忘れてしまっていたものも存在することもたしかである。これを機に再確認してはいかがであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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