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ビットコインを法定通貨にしたエルサルバドル、頼みは中国か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中米エルサルバドルのブケレ大統領は18日までに、「毎日1ビットコインを購入する」とツイッターで発表した。同国は昨年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨として導入したものの利用が低調で、てこ入れする狙いがあるとみられる(19日付共同通信)。

 エルサルバドルは2021年9月7日にビットコインを世界で初めて法定通貨に採用した。このため、大統領が何億ドルもの公的資金を使ってビットコインを購入していた。

 地元メディアは、エルサルバドル政府がこれまでに少なくとも2381ビットコインに約3億7500万ドルを投資したと報じている(19日付共同通信)。

 エルサルバドルがビットコインの値上がりに賭けて計画していた10億ドル規模のエキゾチックボンドの発行は行き詰まった。保有するビットコインの市場価値は大手交換所FTXトレーディングが経営破綻した影響を受け、大きく落ち込んだ。これにより同国の財政は一段と逼迫した。

 エルサルバドルのウジョア副大統領は11月上旬、中国から国債を買い取るという申し出を受けているとメディアに対して明らかにした。その直後にはブケレ大統領が中国と自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉を始めると表明した(28日付日本経済新聞)。

 ブケレ政権はこれまで自身に批判的な米国政府に反発し、中国と距離を縮めてきたが、あらためて中国がここぞというタイミングでエルサルバドルに接近し、中南米への影響力を一段と強化する構えをみせてきた。

 スリランカの例もあり、中国からの支援に大きく依存した場合、あらためて財政危機を招く恐れもある。しかし、エルサルバドルはそれどころではなくなってきているのであろう。

 在エルサルバドル日本大使館の試算によると、17日時点でエルサルバドル政府はビットコイン購入で約6500万ドルの含み損を抱えていた可能性がある。ただし、ビットコインの購入額は外貨準備高の3%程度にとどまる。売却しなければ損失は確定せず、すぐに財政に深刻な影響を及ぼす規模ではない(28日付日本経済新聞)。

 ただし、債務危機にある国にとって最後の貸し手ともなる国際通貨基金(IMF)は、エルサルバドルに法定通貨の見直しを求めていた。IMFから13億ドルの融資を受ける計画はほぼ頓挫している。ビットコインを法定通貨のままとするうちは、今後の債務再編の行方は見通しにくい。

 格付け会社のフィッチ・レーティングスは9月、エルサルバドルの格付けをCCCからCCに引き下げたと発表した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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