政府と日銀のチグハグさ
物価高や円安に対応するため、政府は、家庭や企業の電気料金の負担緩和策などを盛り込んだ財政支出の総額が39兆円程度となる新たな総合経済対策を決定した。
岸田総理大臣は新しい総合経済対策について、「対策は、財政支出が39兆円、事業規模はおよそ72兆円で、これによりGDPを4.6%押し上げる。また、電気代の2割引き下げやガソリン価格の抑制などにより、来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げていく」と意義を強調した(28日付NHK)。
まさに規模有りきの経済対策である。それで果たしてGDPを4.6%押し上げられるのかは甚だ疑問である。
電気代の2割引き下げやガソリン価格の抑制などにより、来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げていくとしている。
これに対して日銀は2%の物価目標は達成されていないとして(現実には3%程度となっているのだが)、非常時の金融緩和策を続けている。
コストプッシュ型の物価上昇は認めたくないとして、その分は政府がカバーして引き下げるということであろうか。いったい日銀の物価目標とは何か。政府はいったい何をしたいのかが、ますますわからなくなる。
円安の要因には日銀の異次元緩和の維持がある。金利差の基軸(日本の金利)が固定化することによる反対側にある米長期金利の上昇により、日米金利差が拡大し、それにより素直に円安が進行する事態となっている。
「日銀が金融政策を判断するが、政府としては投機的な急激な為替変動は誰にとっても好ましくないという判断のもと、日銀と連携し、意思疎通を図りながら為替の状況をしっかり注視していく」と首相は語っているが、そもそもの円安の発端に日銀が絡んでいる以上、そこをまず正すべきであろう。
何も米国並に利上げをしろというのではなく、緩和方向に完全膠着化してしまった日銀の金融政策を、柔軟で機動的な本来の金融政策に戻すだけで、一方的な円安は回避されるはずである。
政府と日銀のチグハグさの背景に、まず、日銀は意地でも緩和方向の向きを変えたくないことがある。さらに、政府としては長期金利を含めて金利を日銀が抑えてくれることで、国債増発を伴う経済対策を打てる。英国のように国債が危機報知器の役割を果たせないことで市場による警告が見えなくなっている。