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英国債の混乱は収まらず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:REX/アフロ)

 イングランド銀行は11日、14日まで毎営業日実施する長期国債の買い入れについて、対象範囲をインデックス連動国債(インフレ連動国債)に拡大すると発表した。

 英国債の売りが止まらない。英国の10年債利回りは再び4.5%に接近している。さらに11日にはこの日の発行を控えてインフレ連動債が売られていた。これを受けて急遽、イングランド銀行は買入対象にインフレ連動国債を加えた。

 インデックス連動国債の買い入れは、9月28日に開始した従来型の長期国債とは別の入札を通じて11日から14日まで行う。

 イングランド銀行のベイリー総裁は11日、英国債市場への介入を予定通り週末で停止すると述べた。12日にもイングランド銀行は、緊急措置として導入した国債購入策について、予定通りとなる14日までの期限で終了するとの声明を発表。市場の一部で求められていた期限延長を改めて否定した。

 クワーテング英財務相が、予算責任局が承認する経済見通しと中期財政計画の発表時期を当初予定していた11月23日から今月31日に約1カ月前倒しすると決めたことも明らかになった。

 英国債の急落は年金による追証対策の換金売りも原因ではあるが、9月23日にクワジ・クワーテング新財務相が大規模減税を柱とする「成長プラン」を発表したことが大きなきっかけとなった。

 その後、英国債やポンドの急落を受けて、最高税率引き下げ計画を撤回したが、「成長プラン」そのものを撤回したわけではない。

 イングランド銀行が国債の買入を行っていたのは金融政策ではなく、年金勘定の投げ売りによる市場の動揺を抑えることが目的となっていた。

 イングランド銀行は物価抑制のため、15日以降は今度は国債の売却を検討している。

 英国での国債の急落は、年金による特殊要因が絡んではいた。しかし、物価の上昇とそれを加速させかねない経済政策、さらにその財源として国債増発も意識されてのものである。つまりは英国債への信認低下も意識されている。

 格付け会社S&Pグローバル・レーティングは9月30日、英国の長期外貨建ておよび自国通貨建てソブリン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表した。 格付け自体は「AA」に据え置いた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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