日銀が招いたといえる円安で、日本のゲーム業界に打撃か
円安は日本経済にとってはプラスなのかマイナスなのか。
いわゆるアベノミクスが登場した2012年末から際に急速な円安と株価の反発が進んだ。これがアベノミクスの成果だとの指摘もあった。リフレ政策を進めようとしたアベノミクスが円高調整のきっかけとなったことはたしかである。
しかし、すでに欧州の信用不安が後退しつつあり、欧米の株式市場が切り返すなどリスク回避の反動の動きがすでに出ていた。そこにアベノミクスが登場し、急速な円高修正がおき、株価が反発したわけだが、それがなくても円高修正は起きていた。この際の円高修正、つまり円安は歓迎されるものであった。
しかし、ここにきての円安はこのときとは状況が異なる。世界的な物価上昇という事態が発生し、日本でも企業物価指数が大きく上昇するなどしているが、そこには円安による影響が大きくなっている。これは消費者物価にも影響を与え、日銀の物価目標はすでに達成されている。
ところが日銀は政策修正をするどころか、強力な緩和を続けるとしてその結果、指し値オペを強化するなど、トルコのように物価高での金融緩和強化を続けている。その結果として日本と欧米の中央銀行の方向性の違いが顕著となり、日米金利差の拡大もあり、円安が進むこととなった。
その円安によりゲーム業界に異変が起きていた。
「国内ゲーム市場に危機が忍び寄っている。円安でゲーム機の海外転売の勢いは収まる気配がなく、国内での普及を妨げ、ソフト販売も不振が表面化している。海外ではインフレでゲーム開発人材の賃金が高騰し、日本人開発者の流出懸念も高まる。ゲーム機・ソフト・開発人材それぞれの不足による〝三重苦〟が市場の衰退を招きかねない事態となっている」(19日付産経新聞)
ソニーが5月に開いた事業説明会では、PS4の国内稼働台数は米国に次いで世界2位であるのに対し、PS5は市場規模に劣る英国より下の3位となっている。ソニーにとっての足下の市場であるはずの日本でどうしてPS5の販売台数が伸びていないのか。これは日本でPS5の人気がないというわけではない。ほしくても買えない事態が続いているためである。
「日本でのPS5の販売価格は約5万円。米国での販売価格は1ドル=100円換算で約499ドルに設定された。それが円安進行で日本では現在、約370ドル(1ドル=135円換算)で購入できる計算だ。日本で手に入れたPS5を米国の設定価格で売れば、約130ドル(約1万7500円)の差額が生まれる」(19日付産経新聞)
販売台数の少なさも手伝いPS5では転売が問題となっていた。国内で定価を大きく上回る価格で販売している向きがいたことはたしかである。それとともに転売先として米国、中国など海外が存在していたようである。国内での転売価格をみると、為替での差額を大きく上回ってたように思うが、それでもまったく影響がなかったとも考えにくい。
円安で割安感が増すのはゲーム機だけではない。日本人ゲーム開発者も引き抜きやすくなるともされる。国際的なインフレで海外での人件費が高騰する傾向もあり、これを魅力に資金力のある米中勢が日本人開発者を買い集めれば国内のゲーム産業は空洞化する(19日付産経新聞)。
日本が世界をリードする業界のひとつがゲーム業界である。円安によって予想外ともいえる影響がゲーム業界に出てきているようである。