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国の2021年度の税収が過去最高を更新

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 国の2021年度の税収が67兆円程度となり、過去最高を更新した。これまでの最高だった2020年度の60兆8216億円を上回り、2年連続で過去最高を更新した格好となった。

 新型コロナの影響から経済が持ち直しつつある中で、法人税収や所得税収が大きく伸びたほか、消費税の税収も増えた。

 コロナ禍からの回復が比較的早かった製造業に加え、非製造業も業績が持ち直した。外国為替市場で進行した円安が輸出企業の業績を押し上げたのも追い風となった(6日付日本経済新聞)。

 2021年度のドル円は110円近辺から年度末には120円近辺に上昇した。その後は2022年度に入り、円安が加速することになり、一時137円台に上昇していた。これは日銀の金融政策による影響が大きいが、この円安も一部の輸出企業には寄与するのかもしれない。しかし、それとともに原材料費と円安が重なったことで日本企業全体として業績押し上げに寄与したとは言い切れないと思われる。

 7月1日に発表された日銀短観では対個人サービスや宿泊・飲食サービスなどが大きく改善を示していた。3月下旬にまん延防止等重点措置が解除されたことで改善した。これにより、2022年度入ってからの非製造業の持ち直しの動きが強まっている。

 所得税は雇用環境の改善などで伸びた。消費税は個人消費の持ち直しのほか、年度後半の物価上昇で購入額が増えたことも税収を上振れさせたとみられる(6日付日本経済新聞)。

 2022年度に入ってからは、原材料価格やエネルギー価格、さらに円安の進行で物価上昇圧力が加わっている。このため、購入を手控える動きも出ており、2022年度では物価上昇による購入額の増加はそれほど大きくはないかもしれない。

 2021年度の当初予算と補正予算を合わせた歳出規模は140兆円を超える。過去最高の税収でも賄えるのは半分に満たない。残りは国債発行に頼らざるを得ない。

 その国債の半分程度は日銀が保有している上に、長期金利コントロールと称して戦時下のような長期金利の押さえ込みを行っている。

 この状況では財政規律が緩んできてもおかしくはない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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