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QRコード決済がプリペイド型電子マネーを上回る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:當舎慎悟/アフロ)

 国内のQRコード決済の市場拡大が続いている。産官学でつくるキャッシュレス推進協議会の利用動向調査によると、2021年の取扱高は前年比7割増の7兆3487億円と、過去最高を更新した。交通系ICカード「Suica」(スイカ)などICチップを利用したプリペイド型の電子マネーを初めて上回り、少額キャッシュレス決済の主役に躍り出た(5日付日本経済新聞)。

 Suicaなどに使われているのはソニーのICカード技術のFeliCaであり、QRコードも1994年にデンソー子会社のデンソーウェーブが開発した仕組みである。つまりもともとは日本の技術が使われている。

 交通系ICカードは通勤・通学などには必需品となっている。また、WAON(ワオン)などの普及もあり、決済手段のひとつとして定着しつつある。ただし、ここにきて決済利用は頭打ちとなっていた。

 それに対してスマートフォン決済大手PayPay(ペイペイ)やNTTドコモの「d払い」などQRコード決済は増加傾向にあり、2021年の取扱高はプリペイド型の電子マネーを初めて上回った。

 特に広告などを積極化しているPayPayの取扱高が4兆9000億円と7割増え、市場の伸びをけん引している。

 ただし、キャッシュレス決済の主力がクレジットカードであることには変わりはない。こちらは楽天カードの躍進が続いているとか。

 政府は2025年までにキャッシュレス比率を2016年の2割から4割程度に倍増させる目標を掲げる。経済産業省の調べでは2020年時点で約3割まで上昇しており、前倒しで達成する可能性も出てきた(5日付日本経済新聞)。

 キャッシュレスの定義次第では日本は決して遅れているとはいえない。また、QRコードを使ったスマホ決済が果たして日本で中国のように普及するということも考えづらい。

 コロナ禍以前では、外国人観光客向け、特に中国からの観光客が多かった。このため、例えば春節の中国観光客向けのQRコード決済を普及させるという目的もあったかもしれない。

 また、地方自治体が扱う住民税や固定資産税、自動車税などの納税が、スマートフォンでQRコードを読み取ることにより、自宅でできるようになるとの観測も以前にあった。早ければ2022年に全国への導入をめざすとして全銀協と総務省が本格的な協議に入ったと報じられたことがあるが、これは立ち消えとなってしまったのであろうか。

 それはさておき、QRコード決済がプリペイド型の電子マネーを上回ったことは個人的に意外性もあった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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