Yahoo!ニュース

ビットコインの急落で、エルサルバドルがデフォルトの危機に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ビットコインの価格はここにきてで3万ドル程度で推移し、2021年11月の過去最高値の半値以下となっている。欧米の中央銀行が金融引き締めに転じ、過剰流動性相場が後退するとの見方に加え、ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計されたステーブルコインの「テラUSD」が急落したことなども影響した。

 ビットコインの急落は、世界中の仮想通貨投資家に打撃を与えているとともに。中米エルサルバドルにも大きな影響を与えつつある。

 エルサルバドルは2021年9月7日にビットコインを世界で初めて法定通貨に採用した。このため、大統領が何億ドルもの公的資金を使ってビットコインを購入していた。

 エルサルバドルの政府高官によると、同国がビットコインの値上がりに賭けて計画していた10億ドル規模のエキゾチックボンドの発行は行き詰まり、保有する1億ドル相当のビットコインの市場価値は約3分の2に落ち込んだ。これにより同国の財政は一段と逼迫し、エコノミストによれば、240億ドルを超える公的債務がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が高まった(16日付WSJ)。

 米国の格付会社大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは今月、エルサルバドルの格付けを「ジャンク」に引き下げた。これは事実上のデフォルト(債務不履行)の一歩手前の水準といえる。

 これらを受けて2023年1月に償還を迎えるエルサルバドルは国債の利回りは足元で60%程度まで上昇している模様。

 債務危機にある国にとって最後の貸し手ともなる国際通貨基金(IMF)は、エルサルバドルに法定通貨の見直しを求めていた。ビットコインを法定通貨のままとするうちは、今後の債務再編の行方は見通しにくいとともに、IMFの支援も受けにくくなる。

 暗号資産を法定通貨にするエルサルバドルの壮大な実験は、世界中の仮想通貨投資家にとっては大きな支援材料であったかもしれない。しかし、そもそもその価値を裏付けるものが存在しないネット上の計算だけに頼るところのものに、国の存亡を賭けた結果がどうなるのか。エルサルバドルの今後の行方に注目したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事