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円安をきっかけに大規模緩和修正が必要との声が強まる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 5月のロイター企業調査では、円安が進む中、日銀による大規模な金融緩和政策を修正するべきとの回答が6割に達した。今すぐ出口に向かうべきとする企業も24%となった(19日付ロイター)。

 やっと企業関係者もわかってくれはじめたようである。円安の進行とそれにもかかわらず、緩和強化にみえる政策を打ち出した日銀に、企業も違和感を覚えてきたと思われる。

 昨年7月の調査では、超低金利の長期化はプラスに作用するとの声が72%にのぼり、今すぐやめるべきとの回答はわずか6%だった。それが円安によって認識が変わったといえる。

 何がきっかけにせよ、現在の日銀の政策がおかしいとみる向きが増えてきたのは喜ばしいところである。

 今回の調査期間は4月26日から5月13日。発送社数は499、回答社数は230だった。どのような修正が必要かとの質問に対しては、マイナス金利撤廃が58%と最も多く、利上げが35%、2%のインフレ目標の修正・撤廃が25%と続いた(19日付ロイター)。

 やっとわかってくれはじめたか、という感想ながら、個人的には日銀が最後に手がけた長期金利コントロールを真っ先に撤廃してほしい。できうることなら、マイナス金利の撤廃、2%のインフレ目標の撤廃も同時に行ってほしい。

 しかし、さすがに一気に正常化に向かうと市場への影響も大きいというのであれば、徐々に進める手もある。しかし、そっちの方向に一切いきたくはないのが、現在の黒田総裁の姿勢である。

 結果として「展望レポート・ハイライト(2022年4月)」をみるまでもなく、矛盾だらけの金融政策となっている。日本経済は回復に向かうとしているのに、強力な金融緩和を継続するというのはどういうわけであろう。しかも2%の「物価安定の目標」が達成されたにもかかわらずである(4月のコアCPIは前年同月比プラス2.1%)。

 大規模金融緩和をいつまで続けるべきかについては、今すぐ出口に向かうべきが24%、今年度前半までが23%で合わせて約半数となったそうだ。黒田東彦総裁の任期となる来年4月まででは計84%に上ったそうだが、たぶんそんな悠長なことは言っていられなくなると思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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