利上げを急ぐFRB、正常化を封印している日銀、その結果の円安進行
ここにきてFRBは利上げを急ぐ姿勢を鮮明にしてきた。21日にFRBのパウエル議長は、インフレ抑制にFRBは「迅速に」行動する必要があるとし、必要に応じて通常より大きな幅での利上げを実施する可能性があると述べた。
1回の会合、もしくは複数の会合で、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント以上引き上げ、一段と積極的に対応することが適切と結論付けられれば、そのように行動すると表明した。
これを受けて、次回の5月3日、4日のFOMCにて、0.5%の利上げが決定されるであろうとの見通しが強まった。22日の米10年債利回りは一時2.39%と、2019年5月以来の水準に上昇した。
ECBの利上げ観測も強まり、22日のドイツや英国の10年債利回りは2018年10月以来の水準に上昇した。
日銀の黒田総裁は18日、4月以降の消費者物価指数は2%程度の伸びとなる可能性があるとしながらも、大半が商品市況高に伴う輸入価格の上昇によるものだとし、金融引き締めは適切でないとの認識を示した。
物価水準が2%を大きく上回っている米欧と違い、「日本が金利を上げる必要は全くない」と発言していた。
正常化から引き締めに転じつつある欧米の中央銀行に対し、日銀は頑として正常化に向きを変える気がないことを示したことで、金融政策の方向性の違いが顕著となり、その結果、円安が進行した。
米10年債利回りが2%を超え、ドイツの10年債利回りも0.5%に、英国の10年債利回りも1.7%台に上昇した。これに対して日本の10年債利回りは0.2%台に止まり、0.25%を付けそうになると日銀が無制限オペで買入を実施し、金利上昇に歯止めを掛けようとしている。
日銀は物価の番人である。その物価には企業物価も当然含まれよう。企業物価指数はすでに前年比で9%を超す上昇となっている。
消費者物価指数もやっと日銀が目標としていた2%に届くと予想されている。欧米の中央銀行はすでに緩和策から手を引こうとしている。
しかし、日銀には動く気はないとなれば、外為市場で円が狙い撃ちされる可能性がある。円安がすでに日本経済にとってはそれほどのプラスとはならない。物価をさらに上昇させかねず、二桁の物価上昇に見舞われそうな企業にはマイナス要因となりうる。
「日本が金利を上げる必要は全くない」と黒田総裁は発言したが、それがむしろ日銀の金融政策の柔軟性を失わせかねない。政府も原油高とともに物価上昇を意識した対策を取っており、日銀もそれに応じた政策に修正することも必要となろう。
それには市場との対話も必要となるが、まずは「全くない」との言葉は修正すべきではなかろうか。