小麦の先物価格が約14年ぶりの高値に、小麦は輸入に頼る日本への影響とは
ウクライナの原子力発電所がロシア軍の攻撃を受けたと伝えられたことで、世界有数の小麦の輸出国であるウクライナからの供給が滞ることへの懸念が高まり、4日に国際的な小麦の先物価格は一段と上昇した。
4日にシカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物価格は7%近く上昇し、週間では40%超の上昇となっている。これは2008年3月以来、およそ14年ぶりの高値水準となる。トウモロコシ先物も10年ぶり高値を付けた。
2020年の小麦の生産量のランキングでロシアは3位だが小麦の輸出量となるとロシアがトップとなっている。ウクライナも生産量、輸出量ともに多い。
欧米を中心とした制裁の強化で、ロシアの物流がまひ状態に陥っている。6日付の日経新聞によると欧州連合(EU)の各国税関はロシア向け貨物に港湾を使用させず、同国のコンテナ取扱量の多くを占める海路が実質的に停止。希少資源や穀物の輸出に支障を来し、部品や製品の輸入も滞った。
ロシアによるウクライナ侵攻がいつまで続くのかは不透明であり、穀物価格などの上昇による影響は日本も避けられないであろう。
日本は小麦は約9割を外国から輸入しているが、日本の小麦の輸入先は米国(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)で、この3か国でほとんどを占めている(農林水産省のサイトより)。
このため、日本の小麦の輸入がすぐに滞るといったことは考えづらい。ロシアの小麦輸出量の7割以上が北アフリカ・中東向けとされている。
しかし、小麦の国際相場の高騰による影響が出てくる可能性がある。日本では輸入小麦は政府が買い付け、国内の製粉会社に売り渡す仕組みとなっている。製粉会社に売り渡された小麦は小麦粉に加工され、主にパン・麺・菓子などの小麦粉を使用した製品を製造する食品メーカーに卸される。
農林水産省は昨年9月8日に2021年10月からの輸入小麦の政府売渡価格について、農水省は主要銘柄平均で19.0%の引き上げを行うことを公表した。その大きな要因として小麦の国際価格の上昇が挙げられていた。また、海上運賃の上昇や為替が円安傾向で推移した影響も加わっていた。
「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」(農林水産省 令和3年9月8日) https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/210908.html
このように輸入小麦の政府売渡価格が変わらない限りは、すぐに小麦先物価格が日本のパン・麺・菓子などの小麦粉を使用した製品の価格上昇に繋がるわけではない。しかし、いずれ輸入小麦の政府売渡価格に反映される可能性はあり、その際には消費者物価などにも影響が出ることが予想される。