日銀の政策修正の行方について
日銀は10日の夕刻に14日の日付指定で指値オペの実施を予告した。対象銘柄は10年363回、364回、365回であり、買入金額は無制限、利回り水準は365回で0.25%とした。
日銀の黒田総裁は15日、指し値オペについて、長期金利が日本の経済・物価情勢よりも「海外金利上昇などその他の要因に過度に影響されたとみて手を打った」と説明した(15日付ブルームバーグ)。
14日には米国の消費者物価指数の発表が予定され、高めの数字が出ると予想された。このため夕刻に仕掛け的な売りが円債に入り、10年債利回りは0.230%まで上昇した。
0.230%が日銀のポイントであったのかは明確ではない。ただし、米消費者物価指数の発表を控え、米10年債利回りが2%台に上昇してくる可能性も高まった。翌11日は日本は休日となっており、米長期金利が上昇してくると、14日の朝から10年債利回りが0.250%を突破してくる懸念もあった。
そのために異例ともいえる前営業日にオファーを出して市場の動きを牽制しようとしたのである。
10日発表の1月の米消費者物価指数は前年同月比7.5%上昇と伸びが拡大し、米10年債利回りは一時2.05%に上昇した。しかし、11日にはウクライナ情勢の緊迫化を警戒し、リスク回避の動きから米10年債利回りは1.94%と9日の水準に戻っていた。
14日の日本の10年債利回りは0.200%まで低下し、0.250%を付けることがなかった。0.250%を付けなければ、そこで売る必要はないため、指し値オペの応札額はゼロとなった。
黒田総裁は、長期金利が予想通り低下して「適切な効果を持った」と評価した。その上で、指し値オペを「しばしばやるつもりはない」としつつ、海外動向などに影響されて長期金利が大きく変動する場合には「必要に応じてそうした措置を取ることもあり得る」と語った(15日付ブルームバーグ)。
これまでと違いややトーンダウンしているかに思われる(気のせいかもしれないが)。0.250%をこれからは超えることはないとみているのか、それとも日本の国債利回り前回に上昇圧力が掛かった際には無理にブレーキを掛けることはない可能性もあるのか。そうではなく0.25%を断固死守するのか。
黒田総裁は出口・正常化ではバランスシートと政策金利引き上げを議論とも発言していた。出口など考えていないといったトーンからこちらも変化している(ようにもみえる)。
出口に長期金利コントロールの解除は含まれていないのかも気になるところではある。もしやこちらはむしろ早めに解除する可能性もあるとの穿った見方はできるのか(それともまったくそれは考えていないのか)。
いずれにしても、黒田総裁の発言からは少なくとも日銀の政策調整には消費者物価指数の2%が見通せる必要があり、それは早くても携帯電話料金引き下げによる要因が反落する4月以降となる(4月の全国CPI発表は5月)。
それまで果たして債券市場がおとなしく待っていられるであろうか。また、欧米の金融政策とは反対方向を向いたまま孤立しつつある日銀の政策に対して疑問を投げかけるような動きが今後出てくる可能性もあろう。