円安が進行しドル円は5年ぶりの116円台、この円安のカラクリとは
外国為替市場で円安・ドル高の流れが再び強まってきた。ドル円は116円を突破し、一時116円34銭と2017年1月11日以来の高値を付けた。
今回の動きは対ユーロなどからみても、ドル高というよりは円安となっている。ユーロ円も昨年12月はじめの127円台から上昇基調(円安ユーロ高)となっており、ここにきて131円台をつけている。
それではこの円安の要因とは何であろうか。何かしら日本売りとなるような要因は見あたらない。日本でも新型コロナウイルスの感染が再拡大しつつあるが、欧米の感染状況と比べればかなり抑え込まれている。政権も安定しており、円の売り要因とはなっていない。
この円安の要因は金利差にあると見ざるを得ない。
3日の米国債券市場では米国債は売られ、米10年債利回り(長期金利)は1.6%台に上昇してのスタートとなった。米長期金利は昨年12月はじめに1.3%台となっていたが、そこから上昇基調を強め、特に1月3日の米長期金利は1.63%と前日の1.51%から大きく上昇した。これには社債発行が相次いだことで、それを買う資金を捻出するためなどによる国債売りも指摘されたが、最大の要因は日米の中央銀行のスタンスの違いとみられる。4日の米長期金利は一時1.68%まで上昇した。
今年の米国の中央銀行であるFRBは資産買入を縮小させる「テーパリング」を早めに終了させて、利上げを行う準備をしつつある。年内に何回程度利上げがあるのかを市場は見極めようとしている。政策金利の上昇によって米長期金利も上昇圧力を強めることとなり、それがあらためて市場で意識されてきた。
前回時のテーパリングや利上げ時の米長期金利の上昇は比較的抑制されていた。しかし、今回については金融政策の正常化の背景に経済正常化とそれにともなう物価上昇がある。特に物価が想定以上の上昇となっているだけに、市場が利上げに過敏に反応しやすい状況になりつつあるともいえる。
それに対して日銀は消費者物価指数が2%の物価目標を達成できないことで正常化に動けないとの見方も強い。このため、日米の政策金利の差とともに長期金利の格差も広がるとの観測から、ドルが買われ円が売られやすいという構図となっている。
米長期金利は上昇したといっても、まだ昨年10月につけた1.7%にも届いていない。外為市場ではさらに先を読んで動いているともいえそうである。ただし、売り方の買い戻しが入ったとの見方もあり、そのショートカバーを呼び込むための仕掛け的な動きである可能性もある。