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日本の消費者物価指数は1年6か月ぶりに上昇するも、わずかにプラス0.1%なのはどうしてなのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 22日に9月の全国消費者物価指数が発表された。総合指数は前年同月比でプラス0.4%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス0.1%、 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でマイナス0.5%となった。

 日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は1年6か月ぶりに上昇に転じた。原油価格の上昇を背景にガソリンや灯油などが値上がりし、「Go To トラベル」の反動で宿泊料が上昇して全体を押し上げた。

 下落要因としては通信料(携帯電話)が大きく、消費者物価を1%程度押し下げる要因となっていた。

 仮に携帯電話料金の引き下げの要因を除いたとしても、前年比でプラス1%程度に過ぎない。ここにきての欧米の消費者物価指数と比較してもかなり低く、日本の企業物価指数と比較しても大きな差が生じている。9月の企業物価指数は前年同月比6.3%上昇した。

 この差はいったいなんであろうか。日銀の緩和が足りないからなのか、当然ながらそうではない。

 川上の企業物価指数に対して川下の消費者物価指数と例えられることがあるが、企業物価が消費者物価に反映されないのは、価格転嫁ができないためなのか。たしかに実感として物価は上がっているようには感じない。企業が企業努力で価格を抑えている側面はあるかもしれないが、それだけの理由なのか。

 賃金が上がらないことには価格転嫁も難しい面もあるかもしれない。それで今回の衆院選でも所得倍増といった声も出ている。たしかに所得が増えれば価格転嫁もしやすくなるかもしれないが、どうやれば所得を増やせるのか。

 年功序列や終身雇用といった日本型雇用制度がバブル後に徐々に変化し、成果主義といった西洋型の雇用に置き換えられていったとされるが、実際には賃金がこれによって抑え込まれ、物価もまた低迷することになった。

 バブル崩壊が消費者物価指数低迷のひとつの要因ともいえるものの、果たしてそれだけなのか。指数を形成する上での技術的な違いとかはないのか。

 ここにきて原油などエネルギー価格の上昇に円安が組み合わさって、物価が上昇しやすい状況となっている。しかし、それが日本の消費者物価に直接反映されていないように見えるのは何故か。繰り返すが日銀の緩和が足りなかったわけではないことは確かである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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