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原油高で農家に打撃、円安による影響も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 ハウスやトンネル、マルチングに使う農業用のポリエチレン、ポリオレフィン(PO)、ビニールといった被覆資材の値上げが相次いでいる。いずれも原料は石油製品のナフサで、新型コロナウイルス禍からの世界的な経済回復に伴う原油高が要因だと21日付日本農業新聞が伝えた。

 これらの原料となるナフサの価格は上がり続けている。輸入ナフサ価格は、今年1月が1キロリットル当たり31800円だった。直近の8月は1月の1・6倍となる同5万2000円台(速報値)となり、さらに上昇が見込まれる(21日付日本農業新聞)。

 農産物の価格への転嫁は難しいため、農家経営に打撃を与えているが、原油価格の上昇に加え、ここにきて円安ともなっていることで、ダブルの打撃となりうる。

 これは農業だけに限ったものではない。漁船の燃料高騰などから漁業にも影響は出るであろう。電力料金の値上げなどによる影響も出てくるものとみられる。当然ながら他の業種にも影響を与えることになる。

 実際に日本の9月の企業物価指数は前年比で6.3%上昇と、伸び率は2008年9月の6.9%上昇以来、13年ぶりの高さとなっていた。

 しかし、消費者物価指数は前年比でプラス0.1%とゼロ%近辺となっていることで、日本では物価高という印象は受けていないかもしれない。しかし、実際にはエネルギー価格や円安の影響がじわりと浸透しつつあり、それが景気に悪影響を与えることも予想される。

 原油高を日本が率先して調整することは難しいかもしれない。しかし、円安についてはその大きな要因が、欧米などとの長期金利の格差であるとするのであれば、介入などよりも、日銀の金融政策そのものの柔軟度を高めることで防ぐことが可能となるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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