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1日の米国株式市場はメルクのコロナ新薬への期待感で上昇、これは経済にとっても特効薬となりうるのか

久保田博幸金融アナリスト
(提供:Merck & Co Inc/ロイター/アフロ)

 米製薬大手メルクとリッジバック・バイオセラピューティクスは、新型コロナウイルス感染症の治療薬として共同開発中の飲み薬「モルヌピラビル」について、入院や死亡のリスクを半減させる効果が試験で示されたと明らかにした。

 メルクは声明で、「暫定分析では、モルヌピラビルは入院や死亡のリスクを約50%低減させた」と説明。モルヌピラビルを投与された患者の7.3%(385人中28人)が無作為化後29日目までに入院または死亡したのに対し、偽薬による治療を受けた患者では入院または死亡の割合は14.1%(377人中53人)だった(1日付CNN)。

 米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可が下りれば、新型コロナウイルスの感染に対する初の経口治療薬となる。

 日本政府にも動きがあり、政府は新型コロナウイルスの軽症者向け治療薬として、米製薬大手メルク社の経口薬(飲み薬)を日本国内で年内にも特例承認し、調達する方向で同社などと調整に入ったと、毎日新聞が報じた。

 10月1日の米国株式市場ではメルクの発表を受けて、この治療薬が普及すれば、経済活動が正常化に向かうとの見方から、経済再開の恩恵を受ける銘柄主体に買いが入り、ダウ平均は反発し482ドル高となった。ブルームバーグはこれを経済再開トレードと呼んでいた。ただし、このニュースを受けてモデルナの株価は大幅安となっていた。

 暫定分析だけであまり楽観的な見方をしてしまうのもいけないものの、その効果が確かなものであり、副反応などについても大きな問題がないとなれば、確かにこれは期待が持てるものとなるのではなかろうか。

 それにしても日本政府の対応がやけに早いようにも思われるが、それだけ期待感が強いという表れなのであろうか。

 日本では国内の感染が急速に減少し、緊急事態宣言等も解除された。今後は人出が多くなったことで新たな感染拡大や、第六波への懸念も強い。しかし、予想以上のスピードでのワクチン接種の拡大とともに、効果のある経口治療薬の普及が進むようなことになれば、ウイズコロナとなっても、本格的な経済活動の再開への期待感が強まることも予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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