コロナ禍による経済への影響は一時的で部分的なものに
内閣府が8日に発表した4~6月期の実質国内総生産改定値は、前期比0.5%増、年率1.9%増となった。速報値の前期比0.3%増、年率1.3%増から上方修正された。
1年前の2020年4~6月期の実質国内総生産改定値は、前期比マイナス7.9%、年率換算でマイナス28.1%となっていた。リーマンショック後の2009年1月~3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなった。
昨年4月7日に政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、その結果、GDPは統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。
このときのGDPの落ち込みは日本だけではなかった。米国の4~6月期GDPも年率換算で前期比32.9%のマイナスとやはり過去最悪の下落率となっていた。ユーロ圏19か国の2020年4~6月期のGDP速報値も前期比で12.1%減、年率換算では40.3%減となっており、こちらも過去最大の落ち込みとなっていた。
米商務省が今年7月29日に発表した2021年4~6月期GDP速報値は、年率換算で前期比6.5%増加し、規模としては新型コロナウイルス禍前の2019年10~12月期を上回った。また、2021年4~6月のユーロ圏の域内総生産(GDP)は速報値で前期比2.0%増となっていた。
新型コロナウイルスの世界的な感染はデルタ株によって再び拡がりつつある。それにもかかわらず、景気そのものは回復してきているのはどうしてなのであろうか。
日欧米ともに政府が大規模な経済対策を打ったからと単純に結論づけることは当然できない。むしろ昨年4~6月期がややパニック的な動きとなり、次第に冷静になるにつれ通常の経済活動が続いていたから、ということではなかろうか。
コロナ禍は確かに飲食業、旅行業などに大きな打撃を与えている。ここは政府などが救済する必要はある。しかし、ほとんど影響を受けていない業種の方が多いのではなかろうか。今年4~6月期を見る限り、個人消費も落ち込んでいない。
コロナ禍は戦前のスペイン風邪流行時と同様に景気そのものへの影響はむしろ限定的で部分的であったように思われる。もちろんサプライ・チェーンへの影響等も考慮しなければならないが、今回のGDPの数値を見る限り、景気を悪化させるほどにはなっていない。
自民党総裁選に向けて候補者、もしくは候補予定者などから、いろいろと政策提言が出ている。なかには2%の物価目標を達成するまで、プライマリーバランスを巡る規律の凍結を主張するという、まったく訳がわからないものも出ている。
また、数十兆円の大型財政政策が必要と唱える人もいる。今年の4~6月期のGDPをみて、それが本当に必要なのか考える必要があろう。むろん、コロナ禍の影響を受けたところには必要だが、そのために予備費があるのではなかろうか。
野党の一部からは、再度、国民一人あたり10万円の支給を訴えている人もいたが、こちらも費用対効果などを考えると人気取り目的以外に考えられない。