欧州中央銀行(ECB)もテーパリングを模索か、欧州の国債がやや動揺
欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーであるホルツマン・オーストリア中銀総裁は、ユーロ圏経済がおおむね予想通りに回復しつつある中で、当局者らはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券購入ペース減速を検討することができるとインタビューで語った(31日付ブルームバーグ)。
これを受けて31日の欧州の国債は総じて売られ、それが米債にも波及し米債も下落した。ECBによるテーパリング観測はまさに寝耳に水であり、欧米の国債市場がやや動揺した格好に。
ホルツマン・オーストリア中銀総裁は、「PEPPをどのように縮小するか、検討できる状況になっている。こうした見解は共有されていると考えている」と述べ、第4四半期に縮小を開始する計画について、9月8、9日の理事会で「確実に」討議されると語った(31日付ロイター)。
やはりECB理事会メンバーであるワイトマン独連銀総裁も1日、ユーロ圏の物価情勢について、このところ物価を押し上げている一時要因が基調的なものになる可能性があり、ユーロ圏のインフレ率がECB予想を上回るリスクがあるとの見方を示した(1日付ロイター)。
来週開く9月のECB理事会でテーパリングについて議論を開始するのか。現状、ドイツやオーストリアなどの出身者、いわゆるタカ派と呼ばれる人達はECB内では少数派に属している。ラガルド総裁など主流派は、正常化に対してはかなり慎重な姿勢を維持していたが、その状況に変化が生まれるのかにも注意する必要がある。
そのラガルド総裁は1日に、ユーロ圏経済は新型コロナウイルスの世界的大流行から回復しつつあり、なお苦境に立たされている一部のセクターに標的を絞った「外科的」な支援のみが必要になっているといった、なかなか微妙な発言をしていた模様。
今回の欧州の国債の反応をみても、テーパリングを予想より早く開始される可能性は完全には捨てきれない。31日に8月のユーロ圏消費者物価指数速報値が発表され、前年比3.0%上昇と、10年ぶりの大幅な伸びを記録した。
FRBのパウエル議長は年内のテーパリング開始の可能性を示唆している。利上げはさておき、テーパリング着手に向けて舵を切っていることは確かであり、ECBとしても物価や経済動向などを確認しながら、テーパリングの議論を始める可能性はありうるか。
日銀に関しては、金融政策の軸足を金利に戻すかたちで、すでにテーパリングは進められているとの認識で良いかと思う。