Yahoo!ニュース

ECBは物価の一時的な上振れを容認

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 欧州中央銀行(ECB)は7月6、7日の特別会合で、ユーロ圏の統合消費者物価指数(HICP)が引き続き適切な物価指標だと確認。「理事会は中期的に2%の物価上昇率を目指すことによって物価安定が維持されると考えている。この目標は対称性があり、目標からの上下双方向のかい離は等しく望ましくないことを意味する」と述べ、以前の「2%に近いがそれ未満」という非対称目標を修正したことを明らかにした(9日付ロイター)。

 8日に公表した金融政策の戦略検証で物価目標を、これまでの「2%未満でその近辺」から「2%」に修正した格好ではあるが、物価上昇率の一時的な2%超えを容認したともいえる。

 そしてECBは22日に開いた正式の理事会で、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)を変更し、物価の一時的な上振れを容認し、より長く超低金利政策を続けることをあらためて表明した。

 パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)については、今はまだ危機下にあり、PEPPは引き続き実施されており、PEPPの終了は絶対的に時期尚早だと考えているとした。

 ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、先行き指針の変更が「全員一致ではなかった」と認めた。理事会メンバーのひとり、ワイトマン独連銀総裁は23日、ECBの低金利環境が過度に長い期間にわたり維持される見通しについて懸念していると述べた。

 ワイトマンやウンシュ・ベルギー中銀総裁は、先行き指針の変更等については反対票を投じたとみられるが、いまのところこちらは少数派となっている。

 ワイトマン氏はドイツ連銀のアドバイザーは、国内インフレ率が年末に5%に向かうと予想していると述べたようだが、今後の物価動向次第では状況が変わる可能性もある。

 しかし、ECBの理事会メンバーの多数派はかなりの慎重姿勢であることも確か。これに対してFRBはどのようなスタンスなのか。27日、28日のFOMCの行方にも注意する必要がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事