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ワクチン接種への期待を強める日銀、オリンピックは?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 6月17、18日に開催された金融政策決定会合における主な意見が公表された。ここで頻繁に使われたワードがあった。

 特に「金融経済情勢に関する意見」では、「ワクチン接種」というワードが、9回も出てきていた。これをみても日銀は「ワクチン接種」による景気回復への期待を強めていることがわかる。

 「ワクチン接種の進展もあって、前向きな循環が働き始めている」  「ワクチン接種の加速は先行きの経済にとって明るい話題である」

 たしかにワクチン接種への期待は強く、これによって新型コロナウイルスの感染拡大や重症者の割合低下などが明らかとなれば、経済正常化への道筋が描ける。

 ただし本来、このタイミングで出てきてもおかしくはないワードが、少なくとも「主な意見」ではまったく出てきていない。それは「オリンピック」である。

 「ワクチン接種」も東京オリンピック・パラリンピックも、金融政策には直接の関わりはない。しかし、両者ともに日本経済へ影響は当然ありうる。

 「ワクチン接種」もそうであるが、「オリンピック」についても本来であれば、注目すべきものであろう。しかし、いまのところ不透明感も強く、ある意味「アンタッチャブル(触れてはいけないもの)」として認識されたのであろうか。

 この会合では、「気候変動関連分野での金融機関の取り組みを支援するための新たな資金供給制度」も決定している関係で、「気候変動」というワードも政府参加者を含めると9回程度使われていた。

 果たして「気候変動」も金融政策に取り込むべきかという議論もあろう。こちらは「ワクチン接種」や「東京オリンピック・パラリンピック」と違って、かなりタイムスパンが違ってくるものではある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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