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米司法省はハッカーから数百万ドルのビットコインを奪還したと発表、これを受けてビットコインは動揺か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米最大の石油パイプラインを運営するコロニアル・パイプラインがランサムウエア(身代金要求型ウイルス)による攻撃を受けパイプラインを閉鎖していたが、同社はその後ハッカーらに身代金を支払っていたことが分かった。事情に詳しい関係者らが明らかにした。支払い後にコンピューターシステムのロックを解除するための解読ツールを入手したという(5月14日付ウォールストリートジャーナル)。

 米石油パイプライン会社にサイバー攻撃を仕掛けた犯罪集団「ダークサイド」が活動停止を表明していることが5月14日にわかったと米メディアが報じた。ダークサイドのサーバーが何者かに乗っ取られ暗号資産(仮想通貨)が盗まれたとの情報もあり、米国で燃料供給不安を引き起こした事件は新展開を迎えた(5月14日付日本経済新聞)。

 ダークサイドの解散表明に関して、米国政府が具体的にどのような役割を果たしたのかについては定かではなかった。バイデン政権はコロニアルの事件を深刻に捉え、ハッカーの活動拠点があるロシアの政府とも協議していたとされる。

 今回、米政府が具体的にどのような役割を果たしたのかが明らかになった。

 5月にパイプライン運営大手コロニアル・パイプラインがハッカーに攻撃された事件で、米政府当局は仮想通貨にして440万ドル(約4億8000万円)相当の「身代金」のうち大半を取り戻したと、モナコ司法副長官が明らかにした。FBIのアベイト副長官は、法務執行当局は身代金支払いに使われたバーチャルウォレットを特定し、資金を奪還したと説明した(6月8日付ブルームバーグ)。

 米国当局が関与かと噂されていたが、実際に米司法当局とFBIが乗り出していた。コロニアル・パイプラインのブラウント氏は、ダークサイドに対処した経験のある専門家と協議した結果、身代金の支払いを決めたと言っており、その専門家がFBI関係者であった可能性があるのではなかろうか。

 つまり、身代金を支払うことで相手の尻尾を掴み、身代金を奪還するという、まるでハリウッド映画さながらのことが実際に行われていた可能性が高くなった。

 米司法省がハッカーから数百万ドルのビットコインを奪還したとのニュースを受けて、ビットコインの価格が下落している。暗号資産(仮想通貨)は匿名性や資金の流れが見えづらい点がひとつの魅力となっていた。それは裏返すと犯罪に使われやすいということになる。

 しかし、その匿名性や資金の流れが見えにくいという利点も当局が本気を出せば、突き止められることも明らかとなった。今回のビットコインの下落は犯罪者がリスクを避けて売った可能性もあるが、当局が奪還したビットコインの換金なども意識した動きであったのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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