日本の国債市場が息してない、大丈夫か
6月1日の債券市場で10年国債の直近発行されたいわゆるカレントものと呼ばれる銘柄(この利回りが日本での長期金利)は、業者間売買を仲介する日本相互証券で一日を通して取引が成立しなかった。日中取引なしというのは、新発の10年国債としては2020年6月29日以来となる。
この日は10年債のカレントだけでなく、5年債、20年債、40年債のカレントも出合いがなかった。つまり出合いがあった国債のカレントものは2年と30年だけという、きわめてレアケースとなった。
この日の債券先物の値幅はわずかに5銭、とはいうものの、ここにきて日中の5銭近辺の値幅が続いていたことで、債券市場の指標とも言うべき債券先物で見る限り、突然商いが細くなったわけでない。
そもそも国債の商いが細くなっていたところに、機関投資家などの週初めの会議等も多いとみられる月曜日は通常少ない。31日は米国市場はメモリアルデーのため、債券市場は休場となっており、米債が動いて翌日の円債も動くといった要因もなかった。
31日に日銀が発表した6月の国債買い入れ予定が5月と回数、量ともに変わりなくこれも予想通りであり、いわゆる手掛かり材料難ということでもあった。
円債については、長期金利コントロールを行っている日銀の意向が相場に反映されやすく、その日銀は長期金利を抑え込むことを目的としている。しかし、市場では長期金利のマイナス化は避けたい。日銀も金融機関へのマイナス金利政策の副作用を抑えようと、長い期間の金利は少し上げたい。それぞれの思惑によって長期金利がわずかなプラス状態に張り付き、その結果、動きそのものも鈍くなっていた。
インフレ期待などで米長期金利が上昇していたが、それもここにきて少し収まってきたことで、これも日本の長期金利を安定化させていた。
しかし、欧米では物価指数が大きく上昇しつつあり、FRBでのテーパリング観測も出ている。ECBでは市場のテーパリング観測を沈めようと躍起になっている状態にある。それに対して日本の物価、特に消費者物価指数は上がる兆しを見せない。それが2%に届かなければ日銀は引き締めに動くことは、少なくとも黒田総裁の任期中はない、というのも市場のコンセンサスとなりつつある。
ということで、動かなくなった日本の国債市場のひとつの典型例として6月1日の10年を含む国債カレント銘柄の出合いなしとなったわけだが、これで日本の債券市場への不安感が特に強まったわけでもない。市場参加者も超閑散小動きは慣れたものであるが、今後、果たして経済の正常化が進んだとき、この慣れがむしろ大きな変動を招くとも限らない。そのあたり、警戒心を怠らないようにしたいとも思う。