米国のコロニアル・パイプライン事件もビットコインが絡む。結局はチューリップバブルの再来か
米コロニアル・パイプラインがサイバー攻撃を受けてパイプラインの操業が一時停止した問題で、同社のジョゼフ・ブラウント最高経営責任者(CEO)がハッカーに対して440万ドル(約4億8000万円)を支払ったことを認めたと、米紙ウォールストリート・ジャーナルが19日伝えた。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、同社は仮想通貨ビットコインによる身代金支払いの見返りに、ハッカーに侵入されたシステムを解除するための復号ツールを受け取ったそうである。
今回のランサムウェア(身代金ウイルス)を使ったパイプラインへの攻撃には、サイバー犯罪集団「ダークサイド」が関与していた。ブラウント氏は、ダークサイドに対処した経験のある専門家と協議した結果、身代金の支払いを決めたという(CNN)。
このサイバー攻撃を仕掛けた犯罪集団「ダークサイド」が活動停止を表明していることが14日わかったと、こちらは15日に日経新聞が報じた。ダークサイドのサーバーが何者かに乗っ取られ暗号資産(仮想通貨)が盗まれたとの情報もあった。
コロニアル・パイプラインが支払ったのがビットコインであったため、ダークサイドの口座から盗まれた(?)暗号資産はビットコインであった可能性が高い。
ここにきてビットコインの価格が大きく揺れている。19日は一時、前日比30%も下落し3万17ドルに下落した。最高値からは半値以下となった。その後、急回復し4万ドル台を回復したが、非常に荒れた展開ともなっている。
12日に12日にビットコインは一時5万ドルを割り込んでいた。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同社が仮想通貨ビットコインを利用した車購入を停止したことを明らかにしたのが要因となった。マスク氏はツイッター投稿で、ビットコインを生み出す「マイニング(採掘)と取引で化石燃料の消費が急激に増える」との懸念を理由に挙げた。
そして、米国時間の16日遅くにビットコインは一時4万5000ドルを割り込んだ。今度は保有ビットコインをテスラが売却するとのツイッター投稿に対し、イーロン・マスク氏は同意したと受け止められる反応を示したことが要因とされた(のちに否定された)。
さらに、19日には中国が銀行や決済会社が仮想通貨取引に関連するサービスを提供することを禁止したと報じられ、これもきっかけとなって3万ドル近くに下げたのである。しかし、その後、急回復し米時間20日朝方に4万ドル前後を回復した。
今回のビットコインの乱高下にコロニアル・パイプライン事件が直接関わったとの見方はいまのところない。しかし、コロニアル・パイプライン事件がビットコインに内在する不安要因をみせつけた面もあったと思われる。
米国では米商品先物取引委員会(CFTC)トップを経験したゲーリー・ゲンスラー氏がバイデン政権の証券取引委員会(SEC)トップに指名され、上院で人事が承認された。暗号資産は米国では「コモディティー(商品)」と見なされ、CFTCの管轄下になる。ゲンスラー氏は暗号資産市場の整備・規制強化に取り組むことになるとされている。
そのゲンスラーSEC委員長は20日、暗号資産(仮想通貨)交換所に関し、投資家を保護するための規制強化が必要との見解を示した。SECへの登録が義務付けられていないビットコインのみを取引する交換所も規制対象に含めたい考えとされる。また、ゲンスラー委員長は投資家保護の観点から仮想通貨を含む様々な新興技術における「犯罪等の問題」に対して法的措置を取る考えを示した。
ここにビットコインとコロニアル・パイプライン事件が関わることになる。つまり、サイバー犯罪集団「ダークサイド」が身代金の支払いとして要求したのが、ビットコインであったこと。それはつまり、犯罪に利用されやすい側面を示すものとなる。
さらにその犯罪集団「ダークサイド」の口座から身代金を含む暗号資産が何者かによって盗まれたということにも注意する必要がある。これにはどこかの政府が絡んでいたのかもしれないが、ネット上にある口座からの暗号資産の盗難の可能性も意識されよう。
そもそもビットコインの価格の乱高下からも通貨としての役割は果たせない。そして、現状は規制が掛からないのが利点のひとつかもしれないが、それは犯罪の温床ともなりうる。
デジタル社会だからこそ生まれた仮想通貨ではあるが、結局、それは投機的な利用が主なものとなった。その値動きなどから見る限り、17世紀にオランダで起きたチューリップバブルと同じようなものであったとの見方もできるのではなかろうか。