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経済の正常化は当然ながら景気に対しプラス要因だが、株式市場に対してはプラス要因となりうるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日本では新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、3度目となる緊急事態宣言が発令されている。4月25日から5月31日まで東京都、京都府、大阪府、兵庫県に当初発令され、5月12日から愛知県、福岡県が、5月16日からは北海道、岡山県、広島県が加わった。

 18日に発表された2021年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.3%減、年率換算で5.1%減となった。

 1~3月期の個人消費は前期比1.4%減。1月8日に首都圏1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に対して2度目の緊急事態宣言が発出され、この緊急事態宣言を受けた外出自粛や、飲食店での時短営業などが消費を抑制した。

 3度目の緊急事態宣言の影響により、今年の4月から6月までのGDPも伸び悩みが確実とみられ、二期連続でのマイナスの可能性がある。

 こんな日本では実感はできないが、米国や中国では景気回復が加速しつつあり、4~6月期のGDPはコロナ禍以前の水準を上回る見通しとなっており、春以降にワクチン接種が進んだ欧州も4~6月期以降の回復期待が強まっている(19日付日経新聞)。

 日本でもワクチン接種は今後進められるとは思うものの、欧米や中国と比べると周回遅れの景気回復ともなりかねない。そのような日本では実感できないが、米国などではすでに正常化に向けた動きも出ている。

 米ニューヨーク州は新型コロナウイルスワクチン接種を完了した人についてはマスク着用義務を免除する方針だ。同州住民のワクチン接種率は50%に近づいており、新規感染者や入院者は減少している。

 今後米国では徐々に規制が緩和されることが予想される。そうなれば「日常」が戻ることになる。飲食業や観光業などが回復に向かうことになろう。

 コロナ禍は社会生活に大きな変化を起こしたことは確かである。テレワークもある程度一般的になると予想される(私は10年以上、テレワークをしているが)。しかし、コロナ禍が過ぎれば、ある程度、オフィスに人が戻ることになろう。

 家で過ごす時間がそれによって少なくなれば、それによって恩恵を被っていたものについてはプレミアムが剥がれることが予想される。それはネット通販であったり、パソコンなどの消費などにも影響を与えよう。

 金融市場にも影響を与えかねない。ここにきて米国の個人の投資活動が後退しつつあるとの指摘があった。ビットコインの価格の動きをみても、バブル相場から脱しつつある可能性がある。これは株式市場などでも同様なのかもしれない。

 さらに経済の正常化に伴う原材料、食料品などの価格上昇による物価の上昇は、長期金利の上昇とともに中央銀行の緩和政策からの転向も想定される。

 経済の正常化は景気に対し当然プラス要因ではあるが、果たしてこれは実体経済以上に上昇していたともみられる株式市場に対してはプラス要因となりうるのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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