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イーロン・マスクに翻弄されるビットコイン、米国の規制強化を担う人物とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 12日の米国株式市場は米消費者物価指数が予想を上回る上昇幅をみせたことから、米長期金利が上昇し、米国株式市場は大きく下落した。

 このタイミングでビットコインも急落し一時5万ドルを割り込んでいた。こちらは物価や長期金利の上昇に反応したというよりも、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同社が仮想通貨ビットコインを利用した車購入を停止したことを明らかにしたが要因となった。

 マスク氏はツイッター投稿で、ビットコインを生み出す「マイニング(採掘)と取引で化石燃料の消費が急激に増える」との懸念を理由に挙げた。しかし、これは何を今更感が強い。この程度のことは当然、マスク氏をはじめテスラ関係者も認識していたはずであるが。

 どうしてこのタイミングでこのような発言をしたのか。米消費者物価指数の上昇による米長期金利の上昇から、ビットコインを含めたバブル相場の終焉を意識したのであろうか。それにしてもタイミングが良すぎるようにも思われる。

 マスク氏がツイッターでビットコインなど暗号資産のことをつぶやきはじめてから、ビットコインの価格はマスク氏の言動に翻弄されるようになった。

 ビットコインなどは以前、仮想通貨と呼ばれていたが、価格の動きの激しさもあり、通貨としての認識はなくなっている。呼び方も仮想通貨から暗号資産にあらためられ、金融資産という位置づけと言うより商品との認識となっている。

 株式市場などではいろいろと規制が強化されている。たとえば、インサイダー取引や相場操縦などは禁止されている。

 これに対してビットコインなどの暗号資産についてはどうであろう。そもそもどこがどのような規制を強いるのか。

 現在、米国では米商品先物取引委員会(CFTC)トップを経験したゲーリー・ゲンスラー氏がバイデン政権の証券取引委員会(SEC)トップに指名され、上院で人事が承認された。

 暗号資産は米国では「コモディティー(商品)」と見なされ、CFTCの管轄下になる。ゲンスラー氏はビットコインETFなどに絡む暗号資産市場の整備・規制強化に取り組むことになる。

 現状では、ビットコインなどの規制については模索中ではあるものの、すでに市場規模も大きくなり、マスク氏のように相場操縦が疑われかねない事例も出ている。暗号資産と金融市場の知見が豊かなゲンスラー氏が、今後どのような対応をしてくるのかにも注意する必要がありそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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