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アルケゴスが金融機関からの訴訟に備えて破綻準備とか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は5日、米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントが破綻に向けて準備を始めたと報じた。取引のあった金融機関からの訴訟に備え、破綻やリストラに詳しい助言者を雇ったという(6日付日経新聞)。

 ビル・ホワン氏のファミリーオフィス、アルケゴス・キャピタル・マネジメントのポジション崩壊に絡む損失は、野村ホールディングスとスイスのUBSグループが4月27日に合わせて37億ドル(約4000億円)余りを公表し、世界の銀行の合計が100億ドルを突破した。

 アルケゴス・キャピタル・マネジメントとは米国のヘッジファンド、タイガー・アジア・パートナーズの元運用者であったビル・ホワン氏が運用するファミリーオフィスである。ファミリーオフィスとは超富裕層が外部の金融機関のサービスを利用せずに自ら運営し、金融資産を運用するものである。

 アルケゴスはホワン氏の個人資産100億ドルを運用していたとされる。金融機関からの借り入れ(レバレッジ取引)によって実際の運用規模はその数倍に膨らんでいた。その結果、ほぼ資産100億ドルに相当する損失を出したことになる。

 FTが関係者の話として報じたところでは、損失を被った金融機関は弁護士を雇い、アルケゴスに対して訴訟を起こす構えをみせている。融資契約やスワップ取引の取り決めにおける損失補償が焦点になるとか(6日付日経新聞)。

 ホワン氏の実際の保有資産額がどの程度あるのかはわからないが、少なくともアルケゴス・キャピタル・マネジメントにはほとんど資産は残ってはいない。むしろ保有資産以上の損失を抱えた可能性が高い。訴訟となれば破綻手続きが必要となるとの判断か。

 損失を被った金融機関は、アルケゴス全体のリスクについては把握できなかったのかもしれないが、それでも手数料収入を得たいがために、そのリスクを見て見ぬふりをしていた可能性はなかったのか。もし訴訟が起こされれば、このあたりの状況も浮き彫りにされる可能性がある。

 いまのところ、アルケゴスに関わる巨大損失については、特別なものとの見方も強く、連鎖的に巨額損失が発覚するようなことはない。しかし、現在の金融市場はバブル相場の様相を呈しており、過大なリスクが潜在していることも確かである。そのリスクが何かしらのきっかけで顕在化する可能性は十分にありうる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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