消費者物価指数の動向と日銀の金融政策
日本の消費者物価指数(生鮮商品を除く、以下コア指数)は、直近の数値となる2月の段階でマイナス0.4%とマイナスとなっている。日銀の物価目標の2%には距離がある。
コロナ禍にあって、コア指数は昨年4月に前年比マイナスに転じ、一時ゼロ%に戻すが、昨年8月から再びマイナスとなり、今年2月時点で前年比でマイナスが続いている。コロナ禍による消費の後退や原油需要の後退による原油価格の下落などが影響していた。
コロナ禍の前にコア指数がマイナスとなっていたのは、2015年8月から2016年12月までとなる。途中の2016年2月と3月はプラスに転じていたが再びマイナスに沈んでいた。このとき最も影響していたのは前年比での原油価格の下落であったとみられる。
それでも日銀は2016年1月にはマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定していた。同年9月には長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定している。これによって物価は前年比でプラスに戻ったわけではない。
原油価格が50ドル台に戻すなどしていたことや、9月に100円近くまで下落していたドル円が2016年末に117円台に戻すなどしていたためである。
もう少し詳しくみてみると、2016年初のリスクオフの動きが英国のEU離脱でピークアウトしたところに、原油価格の上昇の動きも出ていたところ、米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利がリスクオフの反動を起こすきっかけとなった。つまりリスクオンの動きによって円高から円安となり、それも物価に影響を与えた。
これは2012年11月のアベノミクスの登場のタイミングとも似通っている。コア指数は異次元緩和を決定した2013年4月までのマイナスから、5月以降はプラスに転じ、1年後の2014年4月にプラス1.5%に転じた。果たしてこれはアベノミクスの主要な柱である日銀の大胆な金融緩和策によって生じたのであろうか。
2012年末に向けて欧州の信用不安がECBの積極策などによって後退し、すでに米国の株式市場は上昇基調となっていた。日本でもリスクオフの反動がいつ起きてもおかしくはないところに、安倍首相(当時)の輪転機発言が登場した。一気に円高調整が起きて、株価も反発したに過ぎない。急激な円安とともに原油価格が高止まりしていたこと、消費増税前の駆け込み需要などによってコアCPIはプラス1.5%まで上昇したのである。
消費者物価指数の動向と日銀の金融政策の歴史を遡ってみてみたが、日本の消費者物価指数はリスク回避の反動、それによる円安、さらに原油価格の動向などに影響を受けやすいが、日銀の金融政策が直接作用している様子はうかがえなかった。