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今はバブルなのか、2000年のITバブルとの比較

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Fujifotos/アフロ)

 現在の金融市場をみると欧米の株価指数が過去最高値を更新し、東京株式市場でも日経平均は3万円台を回復し、30年ぶりの高値をつけている。これは果たしてバブルなのであろうか。

 2002年に元FRB議長のグリーンスパン氏は「バブルは崩壊して、初めてバブルと分かる」という言葉を残している。これは2000年における米国のITバブルの崩壊をみてのものであった。

 グリーンスパン氏がFRB議長として在任中に、米国でのいわゆる「ITバブル」が発生した。グリーンスパン氏は1996年の講演で、米国株式の上昇に対し、「根拠なき熱狂が資産価格を不当につり上げている」とリスクを指摘したが、ITバブル発生を防ぐことはできなかった。 

 1995年に米マイクロソフトのウィンドウズ95が発売され、ブラウザ・ソフトのネットスケープが新規公開を果たした。このあたりからインターネット株ブームが始まった。1998年から1999年にかけては、ベンチャーの創業資金や株式への投資資金の調達が容易であったことなどを受け、IT関連企業の株価は急速に上昇。その後も過度な投資が行われたことから、IT関連企業の株価は急騰し、バブルへと発展していったのである。

 2000年の春以降、IT関連企業の収益に改善の兆しがみられなかったことなどから、IT関連企業に対する期待は急速に縮小した。1999年6月から2000年5月にかけて、FRBは政策金利を4.75%から 6.5%へと引き上げていた。このFRBの利上げも重なったことから、株価は急速に下落し、ITバブルは崩壊した。

 現在もバブルを匂わす兆候が株価そのもの以外でも、あちらこちらでみられている。ビットコインの上昇などもそのひとつであろう。また、投資家は株式を購入するために巨額の資金を借り入れていることが指摘されていたが、ニューヨーク証券取引所証拠金債務、つまりポートフォリオに対する借入金は前年同期を49%も上回り、これほど増加したのはITバブル崩壊前の1999年以来となる。

 今回の米国を主体とする株式市場の上昇の根拠としては、政府の大規模な財政政策と中央銀行による大胆な金融政策がある。その資金が資産価格を不当につり上げている可能性は十分にあり、その結果、アルケゴスの巨大損失などを招いた。

 ここにきて長期金利の上昇はいったん落ち着いてはいるが、物価などの動向次第でいずれ2%を超えて上昇してくる可能性は十分にあり、この金利上昇が、バブル崩壊のきっかけになる可能性もある。

 ただし、FRBのパウエル議長は8日、景気回復は不均一で不完全なままだと述べ、金融緩和の縮小には米国経済の一段の改善が必要との見方を示したように、大胆な金融政策が今後も続き、今後もバブルがさらに膨らむ可能性もある。

 日本のバブル崩壊前(1989年)もすでに長期金利は上昇基調となっていた。そこからタイムラグがあってのバブル崩壊となった。

 グリーンスパン氏の言にもあったが、バブルは崩壊して、初めてバブルと分かるため、現在がバブルとの認定はできない。また、それがいずれ崩壊すると指摘しても、オオカミ少年としてみられる可能性も高い。それでも、そのリスクは意識しておくべきで、細かい兆候も見逃すべきではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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