好調な米雇用統計を受けての米債の動きは利上げを意識か
2日に発表された3月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比91.6万人増となり、市場予想の65万人増程度を大きく上回り、昨年8月以来の大幅な増加となった。2月の雇用者数は37.9万人増から46.8万人増に上方修正され、1月分も16.6万人増から23.3万人増へ上方修正された。
3月は全ての業種で雇用者数が増加したほか、労働参加率も上昇した。失業率は6.0%と、2月の6.2%から低下。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている。こうした影響を除くと失業率は6.4%だった(2日付ロイター)。
米国のバイデン大統領は、好調な内容となった雇用統計を称賛すると同時に、新型コロナワクチンの普及など「これまでに遂げた進展が反転する恐れがある」と気を緩めないよう釘を刺した。また、米国はインフレリスクに直面していないとの見方も示した。
たしかに現状、米国ではインフレリスクに直面しているわけではない。しかし、物価が今後上がるであろうとの兆しはあちらこちらで出てきている。
2日の米国市場は、グッドフライデー(聖金曜日)の祝日のため、株式市場や商品の立ち会い取引は休場となった。債券市場は東部時間正午までの短縮取引、いわゆる半ドンとなった。
その米国債券市場では、期間の短い国債主体に利回りが上昇した。長い期間の国債の利回りも上昇したのだが、上げ幅は短い方が大きい。短い金利のほうが中央銀行であるFRBの動きに影響を受けやすく、これはFRBが想定しているよりも早い時期に行動に出る可能性も意識した動きといえる。
すぐに利上げがあると予想したわけではないが、年内に緩和縮小を巡る討議を始めガイダンスを修正する可能性があるとの見方が出るなど、利上げ時期が想定以上に前倒しされる可能性を意識した米長期金利の動きといえた。
市場参加者の思惑、もしくはそれをリスクと捉えて先んじて動いたことではあるが、それだけ米長期金利には上方圧力が掛かりやすい地合であるということも言える。2日の米10年債利回りは1.73%に上昇したが、1.9%もいずれ視野に入ってこよう。