長期金利の上昇は景気への楽観を反映か、いずれ中央銀行は正常化に向けての出口模索に
英国の中央銀行であるイングランド銀行のベイリー総裁は15日、市場金利の上昇は景気への楽観を反映しているとの考えを示した(15日付ブルームバーグ)。
ちなみに前任者と比べてやや陰が薄く感じるアンドリュー・ベイリー総裁は、2020年3月16日にイングランド銀行の総裁に就任した。
ベイリー氏はキャリアの大半をイングランド銀で過ごした生え抜き。1985年にイングランド銀行に入行し、総裁秘書や発券部門の責任者などを経て、2013年に副総裁(金融機関監督担当)に就いた。16年に金融規制機関であるFCAのトップに転じ、カーニー総裁の後任としてイングランド銀行の総裁に就任した(2019年12月20日付日経新聞)。
前任のカーニー総裁はやや異色の総裁であった。イングランド銀行の総裁の前はカナダの中央銀行であるカナダ銀行の総裁であった。
そのカナダ銀行(中央銀行)のシェンブリ副総裁は3月11日に、国民が新型コロナウイルス流行期間中に増やした貯蓄を使って消費し始めれば、経済成長に「大きく影響」する可能性があると述べた。金利上昇ペースが加速する可能性があることを示唆した(12日付ロイター)。
18日にはイングランド銀行で金融政策を決めるMPCが開催される。
11日の欧州中央銀行(ECB)で金融政策を決める政策理事会では、今後数か月の債券購入ペースを加速させる方針を示した。域内経済の回復を脅かす債券利回り上昇の抑制を図ることが目的となるが、これはやや時期尚早に思われた。
それというのも、ここにきての米国や欧州などでの国債利回りの上昇は、新型コロナウイルスのワクチン接種などによって、正常化にむけて経済の回復が期待できるとともに、大型の経済対策による個人消費の回復などによる物価の正常化などを期待してのものであるためである。
イングランド銀行のベイリー総裁はBBCラジオ4とのインタビューで、「過去1か月ほどの間に英国でも幾分の金利上昇が見られた」が、「これまでのところ、金利の動きは景気見通しの変化に沿ったものだと考えている」と語った。
これが素直な見方であると思われる。このため、18日のイングランド銀行のMPCでは、現在の資産購入ペースを維持することが示唆されるとみられる。年内にペースを減速させる可能性もあるとされている。
長期金利が景気や物価の回復を読んで動き、コロナ禍以前の水準程度に戻ることを恐れる必要性はないと思う。ましてや、景気や物価のトレンドから鑑みて、いまは追加緩和を模索、もしくは容易にさせる工夫をするときではなく、中央銀行は正常化に向けての出口を探るときに来ていると思う。