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カナダ銀行は早期利上げを示唆、それに対しECBは長期金利上昇を抑制、日銀は緩和余地を拡大?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 カナダ銀行(中央銀行)のシェンブリ副総裁は11日、国民が新型コロナウイルス流行期間中に増やした貯蓄を使って消費し始めれば、経済成長に「大きく影響」する可能性があると述べた。金利上昇ペースが加速する可能性があることを示唆した(12日付ロイター)。

 カナダ銀行はこれまで、経済のスラック(需給の緩み)が吸収されるまで金利を据え置く姿勢を示していてが、シェンブリ副総裁は4月にこれらの見通しを更新するとした。

 このカナダ中央銀行の動きは注意しておく必要があると思う。カナダ銀行は意外にフットワークが軽く、状況に応じて金融政策を変更させる柔軟性を持っているためである。

 これに対して、11日のECB理事会では、今後3カ月間の資産購入をこれまでより「かなり速いペースで実施する」と決めて発表した。欧州では米金利上昇を追いかけるように長期金利が上昇していた。新型コロナウイルスの感染拡大リスクが消えず、経済・物価の回復が力強さを欠くなか、金利だけが上昇する事態を避ける狙いがあるそうである(12日付ロイター)。

 金利だけが上昇する事態というが、長期金利は本来市場で形成されるものであり、先を読んで動くものである。何故、長期金利が上がってきたのか、その理由を踏まえてから行動すべきと思うが、とにかく勝手に上昇するのは許さんと言わんばかりである。

 そして、日銀は18、19日の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)の購入について「年6兆円ペース」としている購入原則を削除する方向だと、12日付の毎日新聞朝刊が情報源を示さず報じた。

 すでに日銀は国債買い入れの額について「無制限」にするという言い方で「80兆円枠」を外していたが、今回のETFの購入についても「柔軟」な買入のためのものと思われる。

 しかし、今回の日銀の点検では、長短金利の引き下げが経済状況が悪化した際のツールの1つであると明確に位置付けるとみられ、長短金利に引き下げ余地があることを示すため、当座預金の三層構造の見直しを検討する見通しだとも報じられている。

 現状、日銀が追加緩和する必要性には乏しい。むしろカナダ銀行のように、今後の景気の過熱や物価の上昇を意識すべきと思う。そのような最中にどうして、利下げ余地を作る必要性があるというのであろうか。

 そうではなく景気や物価の情勢応じて、長期金利が自由に動くことを認めるべきではなかろうか。勝手に動いては困るから中銀が抑えようとしたり、コントロールしたりしているが、本来、長期金利は自由に動くからこそ、その値動きが何らかのリスクを示すなどの指標となる役割ともなっている。その機能を奪ってしまって良いものであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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