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世界的に食料品価格が高騰していることにも注意

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 株や債券、コモディティーなんてもう古い。家に閉じ込もった素人投資家は今、ビンテージ物のハンドバッグから美術品の株券、果ては希少なポケモンカードに至るまで、通常の金融商品とは異なる資産を手当たり次第に買い漁っていると2月24日にロイターが報じた。

 米国株式市場は過去最高値を更新するなどしていたが、国債の利回りも昨年大きく低下していた。さらに銀や銅などが買われ、ビットコインも大きく上昇するなど、やや異常とも思える状況が起きていた。

 しかし、資金はそれだけでなくポケモンカードなどのレアアイテムにも向かっていたそうである。1990年代に大ヒットした任天堂のビデオゲーム「ポケットモンスター(ポケモン)」のカードは、この1年で価格が大きく跳ね上がったそうである。

 野球カードがトレーディングカードとしては史上最高額の520万ドルで落札されたと1月に報じられたが、資金がポケモンカードや野球カードに向けられているというのはやや異常にみえても、これらが経済に与える影響は限られよう。

 しかし、それが原油などの商品にむけられると状況は異なってくる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの景気回復期待と極めて緩和的な金融政策を背景に石油や銅、穀物などの商品価格が上昇しつつあることには注意を向けておく必要がある。

 ありがたくない話だが、これからやってくる食料インフレは特別厳しいものになりそうだと、こちらは3月2日付けのブルームバーグが報じていた。インドネシアでは豆腐の価格が昨年12月の水準を30%上回っており、ロシアでは砂糖が1年前から61%値上がりした。

 米国の長期金利が2月25日に1.6%台に跳ね上がり、市場が動揺をみせたが、この米長期金利の上昇の背景のひとつがインフレへの懸念である。米国の期待インフレ率は2%を超えている。

 もし新型コロナウイルスの感染拡大がワクチン接種によって止まることになると、経済が正常化するだけでなく、物価もコロナ禍以前に戻ることが予想されるが、過剰な金融緩和と財政政策が相まって、その動きが加速される可能性がある。

 それが食料価格にも反映してくる可能性はある。すでに穀物やヒマワリ種子、大豆、砂糖など主要商品の相場が高騰し、世界の食料価格は1月に6年ぶり高水準となったとか。コロナ禍にあって押さえつけられていた物価が大きく動くことも予想され、それが長期金利の上昇に拍車を掛けてくる可能性もありうる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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