原油価格の動向にも注意が必要に
2月15日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の3月物は一時1バレル60ドル台に乗せてきた。
WTI先物といえば昨年の4月にまさかの事態が発生していた。WTIの先物価格が初めてマイナスとなってしまったのである。WTI先物のマイナス化についてはいくつかの要因が重なった。原油価格そのものが下落した理由としては、新型コロナウイルスの世界的なまん延による経済活動の低下を受けて、原油の需要が大きく後退したことが影響した。
原油の供給そのものも過多となっていたところに、コロナ禍にあって飛行機は飛ばない、人は移動しなくなるなどしたことで、石油そのものの需要が大きく後退した。先行きの需要も見えなくなっていた。
米国内では原油在庫が貯蔵施設の能力の限界に近づいた。タンカーに積み込もうにも用船料が数倍に跳ね上がっているとの報道もあった。供給過多で原油在庫が満タン近くとなっていた上に需要が大きく後退し、まさに石油があふれんばかりとなりそうな事態となったのである。
買い手に取引最終日が迫り、原油そのものを現渡しされるとなれば、貯蔵する設備等が必要となる。買い手が原油在庫を抱えるリスクを嫌がり、取引最終日が迫り、保管費用などを考慮するとマイナスの価格でも売却を急がざるを得なくなったというのが、この原油先物価格がマイナスとなった原因であった。
コロナ禍にあっての先物特有の事情があったにせよ、まさかの原油先物価格のマイナス化であった。しかし、その後のWTIは回復基調となり、40ドル近辺で安定するかにみえた。ところが、ここにきてさらに上昇してきて、60ドルの大台も突破してきたのである。
新型コロナウイルスのワクチン接種により、感染拡大にブレーキが掛かり、世界経済の正常化が意識され、原油需要の急激な回復も意識してきた可能性はある。株式市場などもバブルの様相を示し始め、銀や銅なども仕掛け買いが入るなか、原油先物にも思惑的な買いが入ってきたのであろうか。
原油価格そのものの上昇は物価の上昇を招くことになる。これも米長期金利などの押し上げ要因となっている。
現状では中国などの原油需要は回復していても、世界的にはそれほど需要が回復してきているわけではなく、先取り的な動きではあると思う。しかし、勢いに乗ってしまうとWTI先物が80ドルを超えてくる可能性もないとはいえない。そうなると日本の物価にも影響は当然出てくる。日銀の政策変更への思惑でも出ると、日本の長期金利が予想外の動きを示す可能性も出てくるために注意したい。