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ゲームストップ株はやはり相場操縦だった

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 パリに本部を置く欧州証券市場監督機構(ESMA)は、ゲームストップなどの米国企業を標的にした熱狂的な取引があったことに鑑み、対応に動いていることを明らかにした。オンライン掲示板「レディット」に駆り立てられた個人投資家の投機的な取引を巡っては、市場操作の可能性について当局が調査を進めているとブルームバーグが報じた。

 さらにゲームストップ株の急騰につながったオンライン掲示板「レディット」の人気フォーラム「wallstreetbets」への書き込みで、最も影響力の大きい投稿者の1人だったキース・ギル氏が証券詐欺で提訴された。自身をアマチュア投資家と偽り、株価を人為的に押し上げて利益を得たとされるとも、やはりブルームバーグが報じた。

 ゲームストップ株については、売っていたヘッジファンドに罪があるかのような意見もみられたが、売り買いの是非はさておき、オンライン掲示板「レディット」を使って個人投資家の投機的な取引を仕掛けたことで、こちらのほうがルールを逸脱していた可能性が強かった。

 投資だけでなく投機にしろ、一定のルールが存在する。それは遵守しなければならず、いくら素人の個人投資家であろうが、それは守らなければならない。しかし、今回の仕掛け人ギル氏は素人どころか複数のブローカーライセンスを有する公認証券アナリスト、つまり証券業の免許を取得したプロであり、自身の利益のために相場操縦したとされる。

 正義のためヘッジファンドをやっつけるどころか、ヘッジファンドのショートカバーを誘い出すために、巧妙にオンライン掲示板「レディット」などを使って相場操縦を行って、利益を得ていたようである。プロならば当然、何をしてはいけないのかはわかっていたはずだが、ユーチューブやツイッター、レディットを通じてゲームストップ株の取引をあおっていたようである。

 ルールを守っていれば何をやっても良いというわけではないものの、市場に参加するのであれば、法を遵守した上で行わなくてはならない。これは個人投資家であろうと当然のことである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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