米国のゲームストップ株問題は相場操縦など違法性があるのかが焦点に
2000年11月に出版され、ベストセラーとなった幸田真音さんの小説「日本国債」では、久保井という人物が「牛熊友の会」のチャットを利用して、債券市場参加者などとともに日本国債の暴落を仕掛けるという場面が描かれていた。
まさか同じような場面が20年以上も経過して米国で現実に起きるとは思いもよらなかった。SNS(交流サイト)「レディット」のチャットルーム「WallStreetBets」などで個人投資家に米ビデオゲーム販売、ゲームストップ株の購入を促す呼び掛けが広がり、同株が急騰したことが問題視されている。
これに対して、米証券取引委員会(SEC)は27日、「オプションおよび株式市場で進行中の市場のボラティリティーを積極的に監視している」ことを明らかにした。
また、ネット証券のロビンフッドは28日朝、ゲームストップやAMCなど乱高下している銘柄について、すでに保有している持ち高の処分のみに取引を制限した。
ヘッジファンドもショートを仕掛けていたのに、何故、個人の取引を制限するのかとの声もあったようだが、問題となるのはSECが登場したことでもわかるように、これが禁止されている「相場操縦」に該当する可能性があるためである。
今回のような相場は日本でいうところの昭和にあった仕手戦のようにもみえる。山種証券の創立者で「売りの山種」として経済界にその名を轟かせた山崎種二など、まさに仕手戦を仕掛けていた。また、1985年の債券先物の上場以降の債券市場でも、ディーリングが活況となり、仕手戦のような状況となることもあった。
しかし、このような作為的に価格を動かす行為は、現在では禁じられているのである。市場において相場を意識的、人為的に変動させ、その相場をあたかも自然の需給によって形成されたものであるかのように装い、他人を誤認させ、その相場の変動を利用して自己の利益を図ろうとする行為は、相場操縦取引と呼ばれ、日本では金融商品取引法で禁止されている。
これは米国でも同様であり、今回の事例が「株価操作」に該当するのかどうかも焦点となるのではなかろうか。
今回、ロビンフッダーたちが連携して行った相場のつり上げが、禁止行為に該当する可能性が出てきたことで、取引の制限が行われたと思われる。ただし、この証券会社による取引停止措置に対し、ヘッジファンドが自由に売買できる一方で、個人投資家は買いを止められたことへの批判も出ていた。これについてもSECは調査をするようである。
いずれにしても、今回の騒動はSECがどのように判断するのかという点がポイントとなろう。それにしても昭和の兜町で起きていたようなことが、現在のしかも米国市場で起きるとは。