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米国株式市場では個人投資家の投機的な動きに警戒感、個人投資家が連携してヘッジファンドを打ち負かす?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 27日の米国株式市場は久しぶりに大幅な下落となったが、そのきっかけのひとつが、「ゲームストップ」という株価の動きにあった。「ゲームストップ」とはビデオゲーム小売りチェーン大手だそうだが、この株式に個人の投資、いや投機的な資金が集中した模様。

 28日付ブルームバーグによると、ゲームストップ株はこの4営業日で株価が3倍余りに急伸。27日は通常取引開始直後に前日比140%高となり、高ボラティリティーのために売買は少なくとも2回停止されたとか。

 これに悲鳴を上げたのが空売りを得意としたヘッジファンドである。たとえば空売りを手掛けるメルビン・キャピタルはポートフォリオを調整した後、ゲームストップのショートポジションを解消したとされる。

 市場ではゲームストップ株で売り方のヘッジファンドが大規模な損失を計上したとの報道も27日の米国株式市場の調整のきっかけとなった。

 米国株式市場では、株式取引投資アプリ「ロビンフッド」を通じて若者を中心に、多くの個人が参入している。いわゆるロビンフッダーと呼ばれる人たちである。ロビンフッドは取引情報そのものを収益源としているとされており、手数料は無料となっている。

 会社の業績云々ではなく、大手ヘッジファンドがショート、いわゆる空売りを仕掛けている銘柄に対して、ロビンフッダーたちがネットで情報をやり取りし、いわゆる踏み上げ、ショート・スクウィーズを仕掛けたものとみられる。

 日本でいうところの仕手戦のようなものだが、今回の米国のケースはヘッジファンドという巨人を相手に、オプション取引などの立体起動装置を使って、個人が連携して打ち負かすという、アニメ「進撃の巨人」のような状況となっていた。

 これは株式市場にとって価格形成のゆがみとなることが予想され、仕掛けられた株もいずれ価格調整が入ることも予想される。それとともに今回の米国株式市場のバブルが、このような資金によっても形成されていたとなれば、今回の出来事をきっかけに大きな調整を迎える可能性すらありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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