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ここにきてビットコインが急落した理由、イエレン発言とコインチェック暗号資産流出事件

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 ビットコインは日本時間の8日の朝に、一時4万ドルを超えた。2017年につけた最高値の2倍以上になった。過剰流動性相場が暗号資産にも影響していたのかもしれないが、かなり投機的な動きであったことは確かである。

 ビットコインは名前にコインが付いており、当初は仮想通貨と呼ばれていた。しかし、これだけ値動きが激しいものは通貨とは呼べない。呼称も結局、暗号資産と改められた。しかし、これが金融資産といえるかどうかも怪しいところではある。投機対象物と見ざるを得ない。

 しかし、そのビットコインに代表される暗号資産には、別途利用価値があったようで、それが浮き彫りにされたのず、3年前のコインチェック暗号資産流出事件であった。

 NHKは22日に、「3年前、いわゆる仮想通貨=暗号資産の大手交換会社「コインチェック」から580億円相当の暗号資産が流出した事件で、警視庁がこのうちおよそ200億円分について、不正に流出したと知りながら別の暗号資産との交換に応じたとして、数十人を検挙していたことが捜査関係者への取材で分かりました。」と伝えた。

 3年前の2018年1月に暗号資産の大手交換会社「コインチェック」から「NEM」と呼ばれる暗号資産、およそ580億円相当が外部からの不正なアクセスを受けて流出した。

 その後、匿名性の高い闇サイトで通常より安い価格での交換が呼びかけられた。これは犯罪で得た資金を合法的なものに見せかける、いわゆるマネーロンダリングが目的であるのは明白で、不正に流出したと知りながら別の暗号資産との交換に応じた医師や会社役員など数十人が組織犯罪処罰法違反などの疑いで逮捕または書類送検された。

 一方、流出そのものに関わった人物の特定には至っていないようである。暗号資産は利用者の氏名など個人情報を登録した取引所を介さなければ、所有者や受け取り手を特定するのが難しく、匿名性が高いとされている。3年間もの間、人物の特定には至っていないこともそれを示す。それだけ犯罪に使われやすいものともいえよう。

 これに対して、米国の次期財務長官に指名されたイエレン氏は19日の議会公聴会で、、暗号資産(仮想通貨)に関わるマネーロンダリングやテロリストの利用等、犯罪に利用される点が課題だと指摘した。

 これを受けてバイデン米新政権が仮想通貨の規制を強める可能性が強まったとして、ビットコインが21日の取引で約10%程度も急落し、それにコインチェック暗号資産流出事件による検挙報道が追い打ちを掛けて、一時3万ドルの大台を下回ったとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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