またリフレ派か。日銀政策委員にリフレ派を送る意味があるのか
政府は21日午後、17機関56人の国会同意人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。日銀審議委員に専修大教授の野口旭氏(63)を充てる(21日付日経新聞)。
野口旭氏はいわゆるリフレ派であり、ロイターによると、従来、大規模な金融緩和と財政出動を主張し、アベノミクスを評価しつつも消費増税には慎重で、2%の物価目標達成前に消費税率を10%に引き上げるのには反対だった。自民党金融調査会で現代貨幣理論(MMT)の勉強会に講師として招かれたこともあるとか。まさらリフレ派を象徴するような人物となる。
野口氏は、3月末に退任する日銀の桜井真委員の後任となる。櫻井真委員も当初はリフレ派に近い人物とされており、いわゆるリフレ枠が維持された格好となる。
菅政権となってはじめての日銀人事ということであったが、菅首相も内閣官房参与にリフレ派の高橋洋一氏を任命するなど、リフレ派に耳を傾けているようで、今回の日銀人事でもリフレ派を起用したということであろうか。
櫻井真委員もリフレ派とみられていたが、日銀の審議委員に就任後は次第にリフレ派とは距離を置くようになった。現実をみて何が正しい政策なのかを気がついたのではなかろうか。
それに対して自民党金融調査会(山本幸三会長)でMMTの講師まで行った野口旭氏は、櫻井真氏に比べてリフレ色がさらに強いようにも思われる。
今回、政府は日銀人事を含め、17機関56人の国会同意人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。人事案は政府が決めるものではあるが、このような日銀人事はやや偏りも大きいように思われる。
むろん、同じ意見の人物をあつめるべきではないし、日銀主流派と意見を異にする人物が審議委員になっても良いとは思う。しかし、偏った意見の人たちを一定数送る意味はあるのか。
日銀の金融政策は多数決で決定される。副総裁の若田部氏を含め、片岡委員、安達委員などもリフレ派と呼ばれる人たちである。これはトランプ前米国大統領が最高裁判事に保守派を送り込んだ人事も連想させられる。
リフレ派はインフレターゲットなどに代表されるような日銀の金融政策で物価を動かせると主張していたが、それが間違った見方であったことは、日銀が2013年以降行ったことと、現在までの物価の推移をみれば明らかである。
金融緩和がだめなら財政でとなると、今度は現代貨幣理論(MMT)を試すような事態ともなりかねない。これには大きなリスクを伴うと言わざるを得ない。