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緊急事態宣言による感染拡大防止効果と経済損失と政府債務拡大と

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 政府は7日、東京など1都3県へ緊急事態宣言を出すことを決めた。これにより、飲食店の営業時間の午後8時までの短縮やテレワークによる出勤者数7割削減、不要不急の外出自粛などを求めた格好となる。

 さらに政府は14日、大阪、兵庫、京都の3府県のほか、愛知と岐阜、それに福岡、栃木の合わせて7府県を対象に緊急事態宣言を出した。宣言の期間については、先の1都3県と同じく来月7日までとする。

 11都府県は日本のGDP全体の約6割を占めることで、日本経済に大きな打撃を与えることは確かである。

 前回、緊急事態宣言が出されたのは、2020年4月7日であった。この際には埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、及び福岡県の7都府県とした。4月16日には緊急事態措置を実施すべき区域を、7都府県から全都道府県に拡大した。当初は5月6日までとされていたが、全面解除されたのは5月25日となった。

 この際には、緊急事態宣言により、外出自粛を始め様々な行動が制約されることとなる全国全ての国民を対象に一律、1人当たり10万円の給付を行う方針も伝えられ、それは実施された。

 2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で1~3月期からマイナス7.8%、年率換算でマイナス27.8%となった。リーマンショック後の2009年1月~3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなった。

 今回の緊急事態宣言が前回のように全国に拡大され、期間も延長されるのかどうかは現状は不透明ながら、その可能性は残る。

 今回の緊急事態宣言により、飲食店や観光業界などに大きな影響を与えることは確かであり、GoToキャンペーンの反動もあり、個人消費が前回ほどではないにしろ、大きく落ち込むことが予想される。

 緊急事態宣言を発令すべきなのかどうかという議論も当然あると思われるが、海外ではロックダウンを再開しているところもあり、新型コロナウイルスの感染拡大抑止を優先させざるを得なかったと思われる。

 また、東京オリンピック・パラリンピックの開催も控え、このタイミングの発令となった可能性もある。

 今回の人為的な経済活動へのブレーキにより、その影響が及ぶところには、政府の支援も必要となる。今回はさすがに10万円の給付を行うようなことはないと思うものの、政府債務の拡大は継続するとともに、経済活動の落ち込みにより、法人税などの税収はさらに落ち込むことも予想される。いまはそれを考えるときではないかもしれないが、頭の片隅に入れておく必要もあろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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