日銀総裁はどうして、この状況下で「景気は持ち直している」と言ったのか
日銀の黒田総裁は14日にオンライン形式で開催された支店長会議の冒頭挨拶で、「わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している。」と発言した。
どうも実感とは違うのではないか、緊急事態宣言も発令されており、個人消費の落ち込みも懸念されるなか、「持ち直し」というのはおかしくはないかとの意見もあるかもしれない。
持ち直しと表現の前に、「内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが」と加えていることで、その点についても考慮しているものの、手元の数字からみて、日銀は足下の景気は「持ち直し」と判断したとみられる。
その手元の数字というか、日銀が最も重視しているとされる日銀短観では、12月14日に発表された12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の業況判断指数(DI)はマイナス10と前回の9月調査から17ポイントの上昇となっていた。大企業非製造業のDIも前回に比べて改善となった。
そしてもうひとつ、14日の支店長会議の開催のタイミングで発表される「地域経済報告(さくらレポート)」でも、9つの地域のうち北海道の景気判断を引き下げたものの、北陸と四国、それに九州・沖縄の3つの地域の景気判断を引き上げている。東海や関東甲信越など、5つの地域の景気判断は据え置きとなるが、総じて「持ち直し」との表現となってもおかしくはない結果となった。
これらの数字をもとにしての日銀の判断が「景気は持ち直している」というものであり、それを総裁が挨拶で述べたということになる。
株価の上昇などとともに、今回の日銀総裁発言に違和感を持った人も多いかもしれないが、その背景には日銀短観やさくらレポートがあったと思われる。