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二度目の緊急事態宣言による金融市場への影響

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 菅首相は東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言の発出を検討することを表明した。

 前回の新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言は、2020年4月7日に発布された。このときの対象は埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫となっていいたが、16日からは全国に拡大された。当初は5月6日までとされていたが、全面解除されたのは5月25日となった。

 4月20日には全国民への現金10万円の一律給付を盛り込むために組み替えた2020年度補正予算案を閣議決定している。27日の金融政策決定会合では、金融機関や企業等の資金調達の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持する観点から、追加緩和策を決定した。

 金融市場の動きみると新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済への影響を意識して、リスク回避の動きが強まったのは3月であった。4月以降は落ち着いた動きというか、下げ幅を埋めるような展開となった。

 2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で1~3月期からマイナス7.8%、年率換算でマイナス27.8%となった。リーマンショック後の2009年1月~3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなった。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、その結果、GDPは統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。

 米国の4~6月期GDPも年率換算で前期比32.9%のマイナスとやはり過去最悪の下落率となっていた。ユーロ圏19か国の2020年4~6月期のGDP速報値も前期比で12.1%減、年率換算では40.3%減となっており、こちらも過去最大の落ち込みとなっていた。

 ただし、市場はこういった数字も織り込んでおり、これを受けて再び株価が急落するようなことはなかった。

 今回の緊急事態宣言を受けて、前回ほどではないにしろ景気に大きな影響を与えることが予想される。

 しかし、すでに緊急事態宣言を経験しているだけに、金融市場の動向という面からみるとこれによる影響は株式市場などでは限定的になると予想される。海外ではワクチン接種も始まっており、これによる景気回復への期待が強まることも予想される。

 政府や中央銀行による追加策の可能性もある。しかし、予備費などの活用もあり、仮に今回の緊急事態宣言が全国規模に拡がったとしても、それによってあらためて補正予算編成ということは考えづらいか。

 今のところ予想外の出来事などが起きない限りは、緊急事態宣言による金融市場への影響は限定的になると予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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