泣いた赤鬼のトランプと正常化が期待される青鬼のバイデン
いま日本で流行っているものに「鬼」がある。言うまでもなく「鬼滅の刃」である。鬼にされた妹を人間に戻す、そのためには鬼の大将を退治しなければならない。しかし、その鬼とその手下は異常に強い。その異常に強い鬼たちを退治するという鬼退治の物語である。
鬼といえば、日本昔話によく出てくるのは「赤鬼」と「青鬼」である。その赤と青が戦ったのが、米国の大統領選挙であった。まさに容姿からも赤鬼のようなトランプ大統領は、再選に意欲を燃やしたが、残念ながらその願いはかなわなかった。青鬼というか民主党のバイデン元副大統領が大統領選に勝利した。
しかし、トランプ大統領は負けを認めないという異常な事態となった。それでもトランプ大統領が一般調達局にバイデン氏への政権移行開始を許可するなどしたことで、政権移行は徐々に進むとみられる。
米国の異常な事態は今に始まったわけではなく、トランプ大統領の登場とともに始まったと言って良い。何をしてくるのかわからない米国大統領ほど恐ろしいものはない。それだけの権力や軍事力、そして経済力を有している。
その米国大統領が赤から青に変わる。まさに信号ではないが、「危険」から「安全」に変わることになるのではなかろうか。異常な状況から正常な状態に政治が移行する。流行の言葉でいえば「Gotoノーマル」といえるか。
バイデン氏が発表した主要閣僚人事では、アントニー・ブリンケン氏を国務長官に、ジョン・ケリー元国務長官を気候問題担当特使に指名した。トランプ政権下での混乱を経て、経験重視路線に回帰する人選とされる。
そして財務長官候補には、イエレンFRB前議長を指名するとの正式の発表が30日にあった。その報を24日に聞いたときには「そうきたか」と思ったが、もし就任すれば史上初の女性の財務長官となる。イエレン氏は政治の経験はないが、大統領に継ぐ権力を持つというFRB議長であった。FRB議長が財務長官になった例は過去にあるものの、イエレン氏への期待は大きい。特にここにきて、こじれてきた米財務省とFRBの関係も回復してこよう。しかもFRBはイエレン氏にとって古巣であり、パウエル議長との信頼関係も厚い。
イエレン前議長が財務長官に指名かと報じられた24日の金融市場はリスクオンの動きを強めた。これはまさに「Gotoノーマル」への期待の表れといえるのではなかろうか。
しかし、米国でも新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、今後の経済への影響も危惧される。それに対処するのが「泣いた赤鬼」ではなく、来年の1月20日からは「普通の青鬼」というか普通の大統領となる。それを支える布陣も安定性を強めるのであれば、青色の大統領への期待が強まるのではないかと思われる。