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新型コロナウイルスのワクチンへの期待で株価は上昇、17日の日経平均は29年ぶりに26000円台を回復

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 米製薬の新興企業モデルナは16日、新型コロナウイルスのワクチンの最終治験で94.5%の有効性が初期データから得られたと発表した。数週間以内に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請するとしている(16日付日経新聞)。

 9日には米ファイザーが新型コロナウイルスのワクチンで90%の有効性を発表した。これを受けて9日の米国株式市場でダウは一時、1610ドル高となりザラ場中の最高値を更新した。

 その後、米国内での新型コロナウイルスの再拡大で景気回復は遅れるとの観測も強まりダウ平均は11日から12日に掛けて下げる場面もあった。

 しかし、今回のモデルナの発表を受けて、16日の米国株式市場は、景気敏感株を中心に買いが優勢となり、ダウ平均は470ドル高となり引け値で過去最高値を更新してきた。

 ファイザーの新型コロナウイルスのワクチンは、セ氏マイナス70度程度での保管が必要とされ、これがウイークポイントになるのではないかとの観測もあった。しかし、今回のモデルナの場合、一般または医療用冷蔵庫の温度で対応できることをアピールしていた。2~8度で30日間保管できるほか、マイナス20度では最大6か月保管ができるという。これも16日の株価の上昇にも寄与していた可能性もある。

 モデルナは認可が得られれば年末までに2000万回分のワクチンを米国向けに供給する見通し。2021年には5億から10億回分のワクチンを生産する計画とされる(16日付日経新聞)。

 むろんワクチンの緊急使用許可が得られたとして、すぐにワクチンの効果が現れるわけではない。しかし、それでも新型コロナウイルスの感染がいずれ終息するであろうとの期待も強まろう。

 日本政府は21年前半までに国民全員分のワクチンを確保することを目指し、モデルナからは5000万回分(2500万人分)のワクチンの供給を受ける契約で基本合意している。米ファイザーと、英アストラゼネカともそれぞれ6000万人分の契約を結んでいる(16日付日経新聞)。

 日本国内でのワクチン開発はどうなっているのか。NHKによると、日本国内では、大阪大学の研究者が設立したベンチャー企業「アンジェス」がDNAを使った「DNAワクチン」を開発し、現在、臨床試験を進めているとか。このほか、東京大学医科学研究所のグループやワクチンメーカーの「KMバイオロジクス」、それに大手製薬会社などがそれぞれワクチンの開発に乗り出していて、臨床試験に向けて研究を進めているそうである。

 16日の米国株式市場が新型コロナウイルスのワクチン開発への期待で買われたことから、17日の東京株式市場で日経平均は一時29年ぶりに26000円台を回復した。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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