コロナ禍によって将来のリスクが意識される
9月16、17日に開催された金融政策決定会合の議事要旨が公表された。このなかの日本景気の先行きについて下記のような意見があった。
「このうち一人の委員は、年金不安や長寿リスクが消費の重石となっていたもとで、今回の感染症により予期せず将来の所得が減少するリスクが認識されたことで、家計の貯蓄性向が更に高まり、消費の下押し圧力となることが懸念されると述べた」
新型コロナウイルスの感染拡大とその拡大を防止させるためのロックダウンの実施などは、我々の意識や生活様式を大きく変革させた可能性がある。テレワークの実施などもそうであろうが、それ以上に予期せぬリスクが意識されたのではなかろうか。
地震などの自然災害だけでなく、今回のようなパンデミックの発生時には人為的に経済にブレーキが掛かってしまう。日常が日常ではなくなり、将来が見通せない状況に陥るとなれば、我々はある程度守りに入らざるを得ない。
その結果としての個人では資金を預金に振り向けるなり、企業では危機時に大きなバッファーなった内部留保を見直すなりするであろう。
ただし、今回の新型コロナウイルスによる危機が過ぎ去ってからは、あらたなリスクが発生する懸念も存在する。危機対応のため、政府は積極的な財政政策を取ったことによる債務の悪化である。いくらでも政府債務は拡大できるという理論が正しいのかを試すようなことになる。
中央銀行による積極的な国債買い入れもいずれ問題視される可能性がある。過去には中央銀行による国債の直接引き受けが実施されたことがあるが、それはいずれハイパーインフレを招いていた。中央銀行が引き受けた国債がチャラになるようなことはなく、結果としてハイパーインフレによって実質価値が低減した国債の償還が行えたといったことがある。それはつまり国債保有者が大きな損失を受けることになる。日本国債は日銀以外に誰が保有しているのであろうか。