米国の追加の経済対策協議は大統領選まで一時棚上げとなるが、一部は実施か。米国株式市場は右往左往
米国のトランプ大統領は6日、追加の新型コロナウイルス対策を巡る与野党協議を当面停止すると表明した。民主党の2兆ドル規模の対策案を「拒絶する」と主張し、11月の選挙に勝利すれば、独自の1兆ドル規模の経済対策を成立させるとした(7日付け日経新聞)。
民主党の2.2兆ドル規模の対策案は下院で可決済みとなっているが、共和党が多数派の上院では可決のメドがたたない上に、下院は議会選挙を控えて事実上の休会に入っており、追加の経済対策の早期成立は困難な状況となっていた。
ムニューシン財務長官とペロシ下院議長が協議を継続していたものの、ホワイトハウスに戻ったトランプ大統領は、大統領選挙に向けて戦術を練り直したとみられる。
ただし、トランプ大統領が協議停止を表明した数時間前に、FRBのパウエル議長が、十分な政府支援がなければ米景気回復は弱まると警告していた。そして「財政の崖」という問題も残る。
中小企業の給与補填策は8月に申込期限が切れた。航空会社向けの雇用維持策も9月30日で失効。失業給付の積み増しはトランプ政権が大統領令で部分延長したものの、10月中にも資金が枯渇する可能性がある。公的支援が相次いで切れることで、これが「財政の崖」と呼ばれる足かせとなっている。その意味では待ったなしの状態であるといえる。
この「財政の崖」もあってか、今度はトランプ大統領が6日夜に、議会の上下両院は250億ドルの空運会社の給与支援や1350億ドルの中小企業向け給与保護プログラムをすぐに承認すべきだとツイート、家計への1200ドルの現金給付も個別の法案として承認する方針を示した。これも米大統領選も意識した戦術なのか。
その大統領選挙の行方だが、今回のトランプ大統領の新型コロナウイルスへの感染で、さらに支持率が低下している。体調が戻ったとはいえないなか、早期で退院したのは、大統領選挙を控えて、早期の回復をアピールしたかったものとみられる。しかしそれが支持率の回復には当然ながら繋がってはいない。
追加の経済対策が遅れれば米国経済に多少なり影響を与える可能性がある。このため、6日の米株は下げたものの、7日は一部実施の可能性からそれ以上の反発となっていた。