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中国による日本の国債購入が急増、その理由とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 6日付けの日経新聞によると、中国による日本の国債購入が急増しており、期間1年を超す中長期債の買越額は4~7月に約1.4兆円と前年同期の3.6倍に膨らんだ。

 これは中国が意図的に日本国債を購入し、政治的に利用しようと企んでいるわけではない。

 元々、中国は外貨準備などの大半をドル建てで膨らませてきた。このため、ドル建てで安全資産であるところの米国債への投資がほとんどとなっていた。しかし、政治的配慮もあったのかどうかはさておき、リスク分散の意味でも、その資産を米国債以外にも振り向ける動きを強めていた。

 その一環として、日本国債へ投資も膨らんできたものとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界的なリスク回避の動きなどから、米国債利回りも低下し、10年債利回りは1%を下回って推移している。

 日本の10年債利回りもゼロ%近傍にあるものの、この記事にもあったようにドルを円に交換する際の上乗せ金利も加味した利回りは1.2%台あたりとなる。このため、米国債のままで保有するより、ドルを円に換えた上で日本国債を購入すれば、米国債の利回りを上回ることになる。

 結果としては政治的な意図というよりも、分散投資と利回りを追求した結果、中国は日本国債への投資を増加させたとみられる。日本の10年債利回りはゼロ%が大きな抵抗線となっており、米国債の利回りが今後も低位で推移するとなれば、中国による日本国債への投資が継続される可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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