Yahoo!ニュース

世界のGDPに対する債務残高比率は第二次大戦後の1946年を上回るとの予想に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 IMFのリポートによると、2020年の先進国(日米欧など27か国)のGDPに対する債務残高の比率は前年よりも23.5ポイント上昇し、128.2%となる。1946年に記録した124.1%を上回る公算が大きいと8日の読売新聞が報じた。

 これまでGDPに対する債務残高については日本が突出して多かった。このトップの座は譲らないにしても他の国が追い上げてきた。新型コロナウイルスの感染拡大とそれを防止するためのロックダウンなどにより、経済に大きく打撃を受け、各国は経済対策を実施し、その総額は少なくとも11兆ドルに及ぶとされる。これによって日本以外の国もGDPに対する債務残高の比率で追い上げてきたといえる。

 日本の債務残高は1990年代あたりから増加傾向にあった。いわゆるバブル崩壊やそれによる金融機関の破綻などによって、何でもありの政策が打ち出された。税収は減少し、一般会計の歳出は増加した。いわゆるワニの口が形成されつつあった。2010年代には税収が回復してきたものの、歳出はそれほど抑えられず、口は開いたままとなった。それが2020年度の大規模な補正予算の編成によって、ワニの上顎が外れた。

 欧米もリーマン・ショックや欧州の信用不安を経て、それなりの財政出動はあったものの、債務の増加は比較的抑えられていた。しかし、新型コロナウイルスによって債務の拡大は避けることができなくなった。

 これから何が起きるのかは予測しづらいし、あまり予想したくない気もする。債務の増加とともに中央銀行が保有する国債残高の膨張も当然ながら気掛かり材料となる。日本では米国のアコード以前のような中央銀行による長期金利コントロールも行われている。

 いまは当然ながら戦時ではない。しかし、債務の膨張と中央銀行への過度な依存は、まさに戦時の状況に酷似している点は注意すべきである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事