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4~6月期の全産業売上高や経常利益の減少が加速

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 財務省が9月1日に発表した4~6月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の売上高は前年同期比17.7%減の284兆6769億円となった。さらに売上高の減少率はリーマン・ショック後の2009年1~3月期の20.4%減となって以来、約11年ぶりの大幅な落ち込みとなった。

 全産業(金融・保険業を除く)の売上高は4四半期連続のマイナスともなった。2019年7~9月期が前年同期比2.6%減、10~12月期が同6.4%減、2020年1~3月期が同7.5%減、そして4~6月期の17.7%減となっていた。

 全産業(金融・保険業を除く)の売上高は、今回突然急減したというよりも、徐々に売上高が減少しつつある中、新型コロナウイルス感染拡大によって、それが加速した格好となっていた。

 製造業は20.0%減、非製造業は16.8%減となった。4~6月期は製造業は5.5%減、非製造業は8.3%減となっていたように、製造業の減少が目立っていた。製造業は世界的な自動車販売の減少などが影響していた。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、生産そのものが低下し、さらに買い控えなども影響していたのではなかろうか。

 非製造業では小売りやサービス業の落ち込みが目立っていた。

 資本金別の売上高をみると資本金に関わらず、同程度の減少幅となっていた。影響は企業規模に関わらず出ていたともいえる。

 また、経済活動が制限されたことで、一部企業では当面の運転資金を確保する動きが広がり、そのため短期借入金は20.8%増と約25年ぶりの増加率となった。

 全産業の経常利益は前年同期比46.6%減となり、こちらは5四半期連続のマイナスとなった。こちらをみても、景気はすでに反転しつつある中、新型コロナウイルスがそれに拍車を掛けた格好となったようにみえる。

 そして、4~6月期の全産業(金融・保険を除く)の設備投資は前年同期比11.3%減と2四半期ぶりにマイナスとなった。前年同期比11.3%減の減少幅はリーマン・ショック後の2010年1~3月期の11.5%減以来の大きさとなった。

 GDP改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で10.4%減となっていた。

 8月17日に発表された2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値では設備投資は前期比で1.5%の減少となっていた。8日に発表される改定値では今回の法人企業統計が反映されるが、上記のように設備投資が予想以上に減少したことで、下方修正が予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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