日欧米における国債や金の下落と株高は、新型コロナウイルスのワクチン開発への期待が背景か
8月に入ってから金融市場の地合がやや変化してきた。米国株式市場ではダウ平均やS&P500は再び上昇トレンドを強めてきた。12日にダウ平均は2月21日以来、約半年ぶりの高値をつけ、S&P500種は一時、2月19日に付けた引け値での過去最高値を小幅に上回る場面があった。
ただし、ハイテク株が多いナスダックは8月に入り、戻り売りに押された格好となった。コロナ禍においてハイテク企業の業績が伸びるとの期待もあり、ナスダックは過去最高値を更新していたことで、利益確定売りに押された格好となった。
東京株式市場でもやはり8月に入り、地合が変わり、日経平均は改めて戻りを試すような展開となり、13日に日経平均は23000円台を回復。2月21日以来およそ半年ぶりの高値をつけた。
そして国債をみると、米国債、ドイツや英国の国債などの利回りは反転しつつある。いったん買い進まれていたのが、ここにきて売られ、利回りは上昇しつつある。これは円債も同様であり、一時ゼロ%まで低下していた日本国債の10年債利回りはそこから反転上昇してきた。10年債利回りのマイナス化は避けたいとの認識もあったろうが、リスク回避のアンワインドの動きが世界的に起きており、その結果、日本の10年債利回りもゼロ%から反発してきたともいえた。
上昇基調となり過去最高値をつけていた金などの貴金属の価格が、ここにきて一時急落した。こちらもナスダックなどと同様にリスク確定売りが入り、それなりに大きなポジションが動いていた可能性もある。
外為市場では円がドルやユーロに対して下落している。ドル円は7月末あたりからそれまでの下落基調から反発し、104円台から107円近くに戻している。ユーロ円については6月あたりからの上昇基調が継続している格好となった。
株が買われ、国債が売られ、金も売られ、円安が進行となれば、リスク回避の巻き戻しとの動きとも捉えられる。8月に入り、何か出てきたのかを考えると、最もそれに影響を与えていたと思われるのは、新型コロナウイルスのワクチン開発の報ではなかったろうか。
バイオ製薬のモデルナのワクチンは7月下旬から3万人を対象とする最終段階の臨床試験に入っており、米国のトランプ大統領は1億本のコロナワクチンの購入を発表した。また、ロシア政府が世界初のコロナワクチンを承認したと報じられるなどした。
安全性や有効性に不透明な部分が多いものの、もし効果が認められれば、経済の正常化を後押しすることになる。絶対、ワクチンの早期の開発など無理、効果どころか副作用が出るとの見方も強いものの、もし効果が出た場合のことを考えると、リスク回避にポジションを傾けるにもリスクが生じる。足の速いヘッジファンドなどが、そのポジションをいったんアンワインドしたことも十分予想される。