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米雇用統計はトランプ大統領が言うほどの大きな数字ではない

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は「7日の雇用統計ではまた大きな数字が出てくる」と述べていたが、実際にはどうであったのか。

 7日に発表された7月の米雇用統計では、非農業雇用者数は、前月比で176.3万人の増加となり、前月の数字に比べると雇用の伸びは大幅に鈍化したものの、市場予想は上回った格好となった。

 今回の伸びは、6月に続いてレジャー・ホスピタリティー業界の雇用増が牽引した。経済活動の再開などによって、飲食店の雇用者数は50万人増えたようだが、米国内での新型コロナウイルスの感染拡大は止まっていない。

 7月の非農業雇用数は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大。いわゆるパンデミック前であった2月の水準をなお1300万人ほど下回っているとの指摘もあった。労働市場が持ち直していることは確かではあるが、回復は鈍いともいえる。

 非農業雇用数は6月が480.0万人増から479.1万人増に下方修正、5月は269.9万人増から272.5万人増へ上方修正された。

 失業率は10.2%となり、前月の11.1%から0.9%の低下となり、こちらも予想を上回る改善とはなっていた。

 しかし、失業率そのものは高止まりしている。米国の失業率は今年の2月までは3%台となっていた。4月に4%台となり、5月に14.7%と大きく上昇し、その後も10%を超えるものとなっている。

 大統領は米経済が力強いV字回復に向かっているとも語ったそうだが、今回の雇用統計の数値を見る限り、V字回復とまでは言いがたい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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